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北陸工業新聞社
2019/01/31

【富山】「わがこと意識」で危機管理/防災の心理学木村准教授(兵庫県立大)が講演/建設業協会青年部/定期的な防災診断を 

 富山県建設業協会青年部(開章夫青年部長)の2019年「新春講演会」が29日、富山市のホテルグランテラス富山で開かれた。後援は富山県建設技術センター、東日本建設業保証富山支店。
 この日は会員、来賓らを含め約150人が出席。開青年部長のあいさつに続き、兵庫県立大学環境人間学部・大学院環境人間学研究科准教授の木村玲欧氏が講師を務め、「災害・防災の心理学」〜21世紀を生き抜くための心がまえと実践〜を演題に講演した。
 木村氏はまず、「21世紀前半は、地震・異常気象などの大災害時代。自然が変わってしまった今、社会が変わらなければならない」と指摘し、「災害はめったに起きないものではなく、頻繁に発生し、その度に命を脅かすものとの認識を持つべき」と訴え、「富山で大災害が発生していないのはたまたま。他人事ではなく「わがこと意識」を持つことが重要」と力説した。
 加えて、わがこと意識を持てない誤解として、「災害は、健康問題や犯罪などと比べて発生確率が低く、特殊なリスクととらえられている。しかし、21世紀には一生のうち、何度かは大災害を経験する可能性がある」とし、「災害も通常業務の問題解決と同じ、との一面もあるが、事前対策がなければ到底解決することは難しい」と解説。
 自身も現地で被災した、昨年9月の北海道胆振東部地震から学んだ教訓として、「北海道全土で大規模停電が発生。電力の重要性、代替機器の自家発電設備の必要性を再確認した。クレジットカード、電子マネーの端末が使用できず、現金の有効性も再度、見直された」と説明した。
 また、北海道を中心にコンビニを展開しているセイコーマートが、停電中もほぼ全店で営業を続けた事例を挙げ、「会社側が、普段から非常電源キットを各店舗に配布しており、従業員の車のバッテリーから電源を確保し営業を続けた。過去の経験を踏まえ、災害対策の見直しを重ねてきた結果であり、事前対策が効果を発揮した」と紹介。
 過去に富山県内で発生した地震の被害状況や今後想定される地震被害の見通しを説きつつ、「各市町村のハザードマップなどを活用し、健康診断のように、定期的に身の回りの安全性を点検する防災診断を実施してほしい」と呼び掛けた。
 一方、災害時の人間の心理も解説。人はなぜ逃げないのかの理由として、「危険な状況でも、ちょっとした変化であれば日常のことと処理してしまう「正常性バイアス」で人の認知がゆがむ。様々な環境に適応してきた人間には必要な機能だが、生命を脅かすような緊急事態には即座に反応できない。このバイアスメカニズムを打破するには、正しい知識と適切な判断、迅速な対応で、わがこと意識を持つことが大事」と重ねて強調。わがこと意識の向上へ、「現実性(災害事例)、地域性(地域の災害)、人間性(被災体験)の3要素を高めることが必要」と訴えた。
 どのように働き掛ければ人は行動するのかの視点でも持論を展開し、「入り口を広く、奥行きを深くする段階的要請法によるコミットメントが大事。認知から行動に至るまでの過程をパッケージ化し、事前のルールで行動を習慣付ける必要もある」と語った。
 最後に、「自分だけは死なないという思い込みは、希望的観測で何の因果関係もない。わがこと意識で生き抜く危機管理が大切」と述べるとともに、「安全・安心は自分たちで作るもの。これまでの知恵・教訓を学び、出来そうなことから実現することで、危機への対応力・応用力を上げていくことが重要」と締めくくった。

hokuriku