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北海道建設新聞社
2019/05/10

【北海道】個性を生かし障害者も輝く職場へ 鐘ケ江建設

「配慮」が全体の「業務改善」につながる
 鐘ケ江建設(本社・北見)は、中度知的障害を持つ男性を雇用し、会社の一員として貢献してもらっている。高橋広志社長は障害者雇用について「遠慮は要らないが配慮は必要」と話し、オリジナルの治具の活用など、障害があっても個性を生かして輝ける職場づくりを進めている。
 高橋社長は、2013年に結成した北見地方障がい者職親会の会長を務めている。同会は障害者雇用を福祉ではなく、大切な社会資源の確保と捉え、雇用や社会的自立に向けた支援などを行っている団体。
 結成時に知人から会長就任を打診されての加入と就任。それまで高橋社長は「障害者の雇用に対してあまり積極的ではなかった」というが、オホーツク管内の支援施設などを回り、実際に障害者と関わることで「うちの会社でも働いてもらえるのでは」との思いが芽生えたという。
 そして15年に初めて知的障害者を雇用。その後、都合により退職することとなったが、17年には、また新たに中度知的障害者の30代男性を雇用した。社内での配置について高橋社長は「まず雇用し、この人ならどのような仕事をしてもらえるか」を考えたといい、男性には、機材センターの整理などを担当してもらうことにした。
 男性は数を数えることが苦手だったため、機材センターに単管を束ねる作業をサポートするオリジナルの治具を導入した。治具は単管1束を作るための束ね方を枠で示すもの。男性は「数」ではなく、枠に単管を積んだ際の「形」で束ね方を覚え、同じ本数の束を作り出せるようになった。
 社内の定義も変更した。同社では単管1束を「50本」としていたが、治具は枠を用いて束を作り出す関係上、「51本」で1束となってしまう。そこで同社は単管1束の定義を「51本」に変更した。
 機材センターで働く社員の提案により、男性が整理作業をしやすいよう、そこに置くべき物のイラストを壁に貼り付けるなどの工夫も行っている。男性に業務を教える際、分かりやすく作業内容を伝えなければならないこともあり、教える社員自身の作業手法見直しの機会にもなっているという。このように男性への「配慮」は「業務改善」につながった。
 センター内が散らかって男性が混乱しないようにと、センターで働く社員の整理整頓に向けた意識も高まったという。高橋社長は「彼を雇用したからこそ生まれた会社の利益」と目を細める。
 男性はとてもきちょうめんな性格で、一度聞いたことを忘れず、やり遂げる性格だという。「センター内をきれいにしよう」との一言で、床に落ちている小さなくぎやごみを小まめに拾い上げ、美化に貢献するなど、個性を生かして仕事を続けている。
 同社は、道内の障害者支援団体などから依頼を受け、障害者の職場見学を積極的に受け入れている。このような活動も評価され、19年3月には、北見市から障がい者雇用優良企業として表彰された。
 道内建設業者の障害者雇用について、高橋社長は「建設業は危険な作業が多いということもあり、最初から雇用できないと決め付けてしまっている業者もいるのでは」と指摘する。
 その上で「まずは障害者に目を向け、一歩踏み出してみることが大切。自分たちが何気なく済ませている単純作業も、切り出して集めれば立派な1人分の仕事になり、会社に貢献してもらえるのでは」と話している。
 高橋社長は「できればもう1人障害を持った方を採用したい。後は全道の建設業者で、さらに障害者雇用が広がってもらえれば」と期待する。