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建設経済新聞社
2019/07/08

【京都】森林利用保全指針の骨子案 新規に災害防止機能強化

 京都府はこのほど、豊かな緑を守る条例に基づく「森林利用保全指針」の骨子案をまとめた。
 平成21年策定の現行指針は、木材生産機能を重視した「木材生産型森林」と公益的機能の発揮を重視した「環境保全型森林」に分類し、それぞれの機能を発揮するための利用保全を推進することを目標に設定。成果として、治山事業は平成20〜29年度に1389ヵ所、森林整備(間伐)は平成20〜29年度に3万8000f(うち治山対策分2200f)、府内建築現場での公共建築物木造率は平成22年度の3・8%から平成28年度に7・3%、新築住宅木造率は平成20年度の49・6%から平成29年度に57・4%に拡大した。
 指針策定後10年が経過し、「大規模な災害が頻発しており、山地災害の発生リスクが増大」「豊かな森を育てる府民税の導入と国の森林環境譲与税の創設」「市町村による森林管理を促進する森林経営管理法が平成31年度施行」「CLT製造施設やバイオマス利用など木材利用の拡大につながる計画の具体化」などの情勢の変化を踏まえ、改定にあたり〈森林の災害防止機能の強化と持続可能な森林づくり〉〈林業の成長産業化と府内産材の需給体制整備〉に向けた施策の方向性を検討していた。
 このほど次期(第2次)森林利用保全指針の骨子案をまとめ、6月議会常任委員会に報告した。現行指針の「木材生産型森林」と「環境保全型森林」の利用保全の推進を基本としながら、▽多発する自然災害へ対応していくための森林の災害防止機能の強化▽平成30年度制定の森林経営管理法に基づき、森林環境譲与税を活用した林業経営の効率化と森林管理の適正化の推進▽CLTやバイオマス等の需要拡大に伴い木材生産の拡大と安定供給を推進−などの新たな課題への対応方針や強化する重点施策を盛り込み、充実させた。
 新指針には、@安心安全で災害に強い森林づくりを新規に盛り込む。山地災害危険地区を中心とした防災対策等により災害防止機能の更なる強化を図る。具体的には「森林所有者等による適切な森林管理が実施されるよう普及啓発等を推進」「危険度の高い森林について適切な森林整備と治山対策を重点的に推進」「集落や公共施設等に近い里山林での危険木撤去等の防災対策を推進」に新規で取り組む。新たな評価指標は、山地災害危険地区での治山事業着手箇所数(累計)として令和11年度(2029年度)2400ヵ所を設定(直近の実績は平成29年度(2017年度)1600ヵ所)。
 このほか、A府内産木材の需要を拡大しニーズを踏まえた供給拡大B健全で多様な森林づくりを拡充する。
 Aでは林業の成長産業化、府内産木材の需給体制整備で、「CLTやバイオマス発電等の新たな大口需要への対応のため、林業事業体の事業量拡大に向けたIoTなどを活用した生産管理技術の導入等を促進」「新たな森林管理システムにより効率的な森林整備を進めるために、サポートセンターを設立し、市町村を支援するとともに、航空レーザー測量等による資源情報の精度向上に向けた取組等を推進」や「他県産材・輸入材との競争力強化への取組を推進」「公共施設や非住宅建築物の木造化や内装材、備品等の木質化を推進」などに新規で取り組む。新たな評価指標は、年当たり木材生産量として令和11年度(2029年度)31万4000m3を設定(直近の実績は平成29年度(2017年度)14万2000m3/年)。また年当たり府内産木材利用量として令和11年度(2029年度)28万9000m3を設定(直近の実績は平成29年度(2017年度)11万6000m3/年)を設定。
 骨子案は7月〜8月にパブリックコメントを実施し、最終案をまとめ、9月議会に提出する考え。