トップページお知らせ >地方ニュース

お知らせ

地方ニュース

建設新聞社
2019/10/30

【東北】直轄通常予算の激減に強い危機感/詳報・東北建設業協会ブロック会議(東北建協連)

 10月28日に盛岡市内で開かれた2019年度東北建設業協会ブロック会議では、国土強靭化や社会インフラ予算の確保に加え、地域間格差の解消、新・担い手3法の適切な運用、働き方改革、生産性向上などが主要な論点となった。この中で東北建協連は、東北地方整備局の直轄当初予算が復興分を除くと激減している現状に危機感を示し、この予算を震災前の全国シェアに戻すことを強く求めた。
 この会議は、国土交通省や東北地方整備局、東北6県・仙台市などの主要発注機関と東北建協連が、地域建設業を取り巻く課題やその対応策を話し合う場として毎年開催している。今回は議題として@国土強靭化の計画的推進と社会インフラ予算の確保A復旧・復興事業の完遂に向けた取り組みB設計労務単価改定と地域間格差の解消等C新・担い手3法の適切な運用と適正な利潤の確保D働き方改革の推進と生産性向上E産学官等の連携による地域建設業の戦略的広報―の計6項目を据えた。
 このうち国土強靭化の計画的推進と社会インフラ予算の確保については、国が「防災・減災、国土強靭化のための3カ年緊急対策」をまとめ、総額7兆円を集中投資するとしたことを評価しつつ、「国土強靭化のための予算は、従来の社会インフラ整備予算とは別枠で確保し、併せて事業内容、規模などの年次計画を示されることが重要」と指摘した。さらに「12年度から(復興分を除くと)東北地方整備局直轄当初予算が激減している」ことを問題視し、「この当初予算を震災前の全国シェアに戻す」よう強く要請。本年度下期補正予算の早期編成も求めた。
 これに対して国交省は「社会資本整備は中長期的な視点に立って計画的に進めていくことが重要。昨年12月には約7兆円の事業規模といわれる『防災・減災、国土強靭化のための3カ年緊急対策』がまとめられた。来年度の概算要求も10年ぶりの7兆円超えとなった。引き続き所要の予算確保に努めていく」と回答。また「台風19号関係の災害対策本部会議で、安倍晋三首相から全力で応急対応・復旧に当たれるよう補正予算を含めて財政措置を講じるとの発言があった。補正予算編成指示があった場合にはしっかり対応したい」と述べた。
 復旧・復興事業をめぐっては、東北建協連が復興歩掛り、復興係数、労務単価の引き上げ、見積活用方式といった被災地特例の継続や、前払金特例措置の延長など復興を完遂するまで現場実態を捉えた対応の必要性を強調。国交省は「東日本大震災からの復旧・復興は国交省としての最重要課題。来年度の復興係数・復興歩掛の扱いは、被災地の現場状況や台風19号の被害を踏まえ、自治体とも連携しながら機動的に対応できるよう検討していきたい」と応じた。
 地域間格差の解消に向けては、同じ職種なら全国どこで働いても同一の賃金が得られる設計労務単価の全国統一価格を念頭に入れながら、当面は設計労務単価をピークの1998年当時まで戻すよう要請。完全週休2日制を推進するため、週6日の労働で得ている賃金を週5日の労働で得られるよう設計労務単価を2割増とすることも求めた。国交省は「設計労務単価は7年連続の引き上げとなっている。労務単価の上昇が現場の技能労働者の賃金水準上昇につながるという好循環を進めていくためにも、さまざまな機会を捉え建設業の関係団体に対して適切な賃金水準の確保を要請している。国交省として見積もり・契約時の法定福利費明示を徹底するよう、市町村工事などにも数値目標を設けて進めていく」といった考えを示した。
 新・担い手3法の適切な運用に関しては▽適切な設計・積算▽低入札価格調査基準のさらなる引き上げ▽適切な設計変更―について意見を交換。このうち調査基準価格の見直しをめぐっては、一般管理費等を現行の0・55から0・90まで引き上げるほか、特別重点調査では他項目と同様の引き上げを求めた。国交省は「本年度は調査基準価格の範囲を10年ぶりに改定し、予定価格の75l〜92lへと引き上げた。まだ十分ではないという声もあるため、業界の意見を踏まえながら対応していく」と答えた。
 働き方改革の推進と生産性向上の観点からは、東北各県内の公共工事を一斉休止する「週休2日普及促進DAY」の取り組みや、秋田県建設業協会などが設立したICT東北推進協議会(i―Academy 恋地)の活動を紹介した上で、同協議会での研修修了者に総合評価などでの優遇措置を与えることなどを要請。新・担い手3法を踏まえた適正工期の確保、施工時期の平準化なども必要とした。これに対し国交省は「新・担い手3法の趣旨をしっかり浸透させていくことが重要であり、改正品確法の運用指針を年内にまとめることにしている。近く運用指針案に対する意見照会を行いたい」「今後i―Conが浸透していくには中小の現場でICT施工が定着することが重要。国交省として本年度から小規模なICT施工区分の新設などに取り組んでいる」などと説明した。
 東北建協連では、今回の要望事項を6県会長会議で決議としてまとめ、11月19日に財務省、国交省、自民党などに対する要望活動を展開する方針。また来年度の開催地は宮城県とすることを決めた。

提供:建設新聞社