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建設経済新聞社
2020/05/22

【京都】府立大の再整備PFI検討 精華キャンパスに研究棟等 共同体育館を先行して整備

 京都府立大学施設整備基本構想によると、施設整備方針の基本的な考え方において、「北山文化環境ゾーンにふさわしい施設整備を行う」「安心・安全で環境・バリアフリーに配慮したキャンパス環境の創出」「耐震上の問題から共同体育館の最優先での整備」などを掲げた。
 施設整備については、(1)各学部がキャンパス内の複数の棟に点在している現状を解消し、講義室、演習室、研究室等を含めて、人文科学系、社会科学系、自然科学系等に分けて集約化を図る(府内産木材など森林資源の積極的な活用、各棟は将来の学部再編成等にも対応できるフレキシブルな構造、北山エリアの景観や建物の調和性等にも配慮し統一的なコンセプトに基づき整備、開放型のキャンパスとする一方で、学生や教職員の安心安全、研究のセキュリティを確保、整備に当たっては、順次スムーズな移転ができるよう、建設・撤去の順番、配置等に配慮等)、(2)利用者の動線の確保、効率的な運用を図るため、用途に応じてゾーニングを行うこととし、教育・研究施設等を中心とした「教育・研究ゾーン」(敷地東側)、府民等の利用に配慮した施設を中心に配置する「地域連携ゾーン」(教育・研究ゾーンの北側)、主に体育館や球技場等が立地する「スポーツゾーン」(敷地西側)の3ゾーンを設定する。
 教育・研究ゾーンは、現在の本館、1号館から7号館に配置されている講義室や演習室、研究室、実習室等を中心に、教育・研究・福利厚生及び事務局の機能を集約。ゾーンの配置は、国公立三大学(京都府立大学、京都府立医科大学、京都工芸繊維大学)の教養教育が実施されている稲盛記念会館、文学部が配置されている府立京都学・歴彩館との近接性と、集約化に伴う規模の確保及び教育・研究環境の確保の観点から、現在の1号館から7号館の場所を中心とする。
 地域連携ゾーンは、地域連携や産学公連携など、大学での研究成果を活かし地域還元するとともに、府民との交流が図れる多彩な関連施設を導入。施設開放や公開講座なども実施する。また学生や教職員をはじめ当該エリアの利用者の利便性向上と、北山文化環境ゾーンの質向上のため、書店やコンビニやレストラン等、民間の創意工夫を活用した施設についても併設する。ゾーン配置は、プロムナードと下鴨中通り、北泉通り等アクセスの利便性と、府立京都学・歴彩館、京都コンサートホール、府立総合資料館跡地に整備される施設等との連続性を考慮し、府立京都学・歴彩館に比較的近い場所を選定する。なお留学生ハウスなど国際交流施設は別途配置する。
 スポーツゾーンは、体育館、野球場、サッカー場、テニスコート等を整備し、教育及び課外活動の機能を維持しつつ、一般への施設開放も実施する。
 府立医科大学との共同体育館(京都工芸繊維大学も含めた三大学連携も併せて実施)の配置は、京都府が実施の可能性調査の結果も踏まえて検討。また弓道場及びクラブボックス機能は、共同体育館の設置に併せて検討する。ゾーン配置は、現在の体育館・グランドを中心とした場所とする。
 整備手法については、施設自体を府の抱える行政課題と直結したニーズに対応できる施設とすることや、民間活力を導入し、府の財政負担を軽減することなどを検討する必要があるとした。
 複合施設としての整備は、地域連携施設を単独で整備するだけでなく、地域や自治体との連携、産学連携を図り、関連する研究室・実験室等も併せて整備し、より密接な連携を図り、地域に貢献する施設として整備することを挙げた。三大学連携では、共同で実験・研究できる共同施設の整備が求められているとした。
 民間活力の導入による整備については、官民連携手法(PPP)を挙げ、積極的に検討する必要があるとし、特に地域連携ゾーンに位置づける新地域連携センター棟については、交流の活性化も意図していることから、民間の利便施設を誘致することが必要とした。
 府民に開かれた大学として研究成果を還元し、地域や企業との連携・交流を進めるために整備する地域連携施設は、地域連携ゾーンに合同棟として集約整備し、書店・レストラン等民間施設を誘致する。留学生ハウス・国際センター及び大学会館機能は別棟での整備も視野に入れ検討する。
 施設整備総括表によると、教育研究施設は現状1万6779uから5927u追加し2万2706u、管理施設は現状1966u、地域等連携施設は現状10uから1640u追加し1650u。合計で現状2万0967uから7994u追加し2万8961u。
 施設整備は共同体育館の整備が最優先で、その他の施設整備は共同体育館建設後のスタートを想定する。
 一方、教育・研究ゾーン内で一定規模の施設を建設するためには、現在空地となっている駐車場及び4号館撤去後のスペースを活用しながら、建設→移転→撤去→建設を繰り返して順次建て替えていく必要があり、可能な限り早期に建設を完了させるため、工事を2期に分けて実施する方向で検討する。
 整備の手順は、@4号館を撤去し、跡地及び駐車場も含めて新4号館(仮称)及び新本館を建設。2号館、3号館、7号館、本館施設を移転A2・3号館及び本館を撤去し、新2号館を建設。5・6号館施設を移転し、各号館の再配置を行う(その後5・6・7号館を撤去)。
 第1期工事で、比較的大規模な施設を整備し、耐震上最も課題となっている2号館、3号館、本館等を全て移転させる(令和6年度完成予定)。
 本体学舎に含まれない新・地域連携センター施設(棟)、木工室、留学生ハウス等は、それぞれ本体工事に平行して早期に建設する考え。
 整備コンセプトは、@南北・東西の軸線を通し、大学キャンパスにふさわしい施設配置を行うA新校舎は4階建てとして集約し、敷地内の緑地・広場・空地を創出するとともに、建替え時の研究室・講義室等の減少を回避するB新校舎は全て接続し、校舎間の移動や学部・学科再編時のフレキシビリティを確保するC1号館と新本館の東面を学校の顔として位置付け、正門を移動して1号館ピロティを通り抜ける新たな軸を構築するD旧校舎跡地は広場や駐車場に利用し、将来の建替え・増築用地とするE地域連携ゾーンとスポーツゾーンをつなぐ動線上に広場を設けることで、学生と学外利用者間のバッファを形成する。
 キャンパス整備スケジュールによると、下鴨キャンパスに先行整備する共同体育館は、令和2年度に整備基本計画を策定し、令和2年度から令和3年度にかけて事業者公募で事業者を選定し、令和3年度から令和4年度にかけて既設解体、埋蔵文化財調査、実施設計を進め、令和4年度から建築工事に着手し、令和5年度中の完成、令和6年度の供用開始を目指す。
 これに並行して、令和2年度に有識者会議での議論を経て、府立大学将来計画を策定する。令和3年度に基本計画策定(PFI導入可能性調査)を進めるとともに、4号館解体を実施し、既存施設老朽化対策に着手する。令和4年度に仕様調整・公募(アドバイザリー業務)や埋蔵文化財調査を行い、令和5年度に実施設計をまとめ、建築工事(1期)に着手する。令和6年度も建築工事(1期)を進め、令和7年度の完成を目指す。その後、2・3号館を解体し、令和8年度から建築工事(2期)に着手。令和9・10年度と建築工事(2期)を進め、令和11年度に完了させ、その後、5・6・7号館、本館を解体する予定。
 精華キャンパスでは、令和6・7年度に研究棟等の整備を行う予定。
      ◇      
 令和2年3月策定の府立大学将来構想基本計画によると、京都の文化と暮らしの未来を創る府民の大学を目指して大胆な改革を推進することを掲げた。21世紀の京都の文化・産業・暮らしをリードする人材を育成することを目指す。
 精華キャンパスにおける植物総合研究センター(仮称)においては、新品種創生、作物の高機能・高品質化に向けた分子レベルの研究などに取り組むなど、府立大学の特色・強みを活かして、持続可能な開発目標(SDGs)を始めとする時代の要請に積極的に応える方向性を明確にした。
 このほか、既設センター(京都地域未来創造センター、国際センター、京都和食文化研究センター、教養教育センター、教職センター)の充実と、新たなセンターの新設案(AIデータサイエンス教育研究センター、情報メディアセンター、京の防災安全安心学研究センター、大型実験機器センター)を示した。