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北海道建設新聞社
2020/09/07

【北海道】胆振東部地震から2年 被災地が着実に復旧

 北海道胆振東部地震の発生から6日で2年になる。大きな被害を受けた胆振東部3町や札幌市でも復旧工事が順調に進み、徐々にかつての日常を取り戻しつつある。ことしお盆前、土砂崩れで19人もの犠牲者が出た厚真町吉野地区を訪れると、復旧工事はまだ続いていたが、完了した急斜面には草が茂り、周辺では営農を再開している様子も見られた。ただ、崖下に設けられた献花台を目にすると、あの日の悲惨な光景を思い出さずにはいられない。さらに、少し人里を離れると震災の傷跡はいまだ各所に見られ、完全な復旧はまだ遠いと感じる。各地の復旧状況、再度の災害防止に向けた取り組みをまとめた。

■胆振東部3町復興着々と

 裏山の土砂が流入し、機能停止した厚真町富里浄水場。地震発生当時は34日間にわたり1941戸が断水し、以前使用していた新町浄水場を再び稼働させた。町では倒壊した階段棟新設のほか、取水施設、浄水施設、配水施設などの再整備をことし6月に終え、試運転の後、7月23日に一部、同31日には全町での給水を開始した。

 裏山の法面は幅700m、高さ30―110mにわたる大規模な崩壊だったが室蘭建管が急傾斜地崩壊対策を進め、2020年度中には法枠や植生など全ての工事が完了する予定だ。

 安平町では、地震で大きな被害を受けた早来中を、早来小との義務教育学校として整備する。新しい学校の基本コンセプトは「自分が世界≠ノ出会う場所」。学校は地域にも開かれた場、社会教育の場として整備する。

 災害の教訓を生かし、1階部分と2階の外壁をRC造、屋根をW造とし、屋根の軽量化を図ることで耐震性を高めるほか、災害時に避難する人々が訪れやすい大アリーナやキッチンスタジオ、トイレを近い場所に配置する。町では、23年4月の義務教育学校としての開校を目指し、現在実施設計を進めており、21―22年度にかけての施工を計画している。

■失われた住まい再建に向け

 胆振東部地震では多くの住宅が被害を受けた。道では市町村の被害認定調査が進捗(しんちょく)したことから、1日に最新の被害状況をまとめたが、それによると住家被害は全壊491棟、半壊1816棟、一部損壊は4万7105棟に上る。さらに非住家も全壊、半壊、一部損壊を合わせて6682棟に被害が及んでいる。

 厚真、むかわ、安平の3町では住まいの再建を目指す取り組みが着々と進んでいる。災害救助法に基づき、仮設住宅に住んでいる住民は、7月末時点で3町合わせて527人。厚真町では新町地区災害公営住宅など計78戸、安平町では地域優良住宅6戸、むかわ町では公営住宅末広団地など30戸の公的賃貸住宅整備が進み、ほとんどが10月ごろには完成する。

 このうち、むかわ町の定住促進住宅文京ハイツはRC造、3階、延べ1030m²で、地震による津波被害を想定し、屋上には津波避難所を設ける。文京ハイツと隣接して鵡川高生徒寮も再建しているが、津波避難所には生徒寮からも直接出入りできるようにする。

 札幌市内では、液状化により大規模な土砂流出が発生した清田区里塚地区で復旧が進んでいる。宅地と道路の地盤改良は3月までに完了。道路は現在、暗渠管や雨水桝の設置を進めていて、舗装に着手している部分もある。今後は路盤や縁石などの道路整備、公園再整備などを促進し、21年度には公共による工事を終える。

 里塚地区では持ち家だった住民の約9割が住宅再建の意向を示していて、早くから対策工法を提示したことなどが早期復旧につながっている。月寒東など、里塚以外で被害を受けた地区については地下水位を下げる対策などを今後実施していく見通しだ。