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建設経済新聞社
2020/12/02

【京都】「保津峡の部分開削検討段階に」 淀川水系河川整備の技術検討会で示す

 京都府は1日、淀川水系の河川整備に関する技術検討会を設置し初会合を開催した。
 国においては「淀川水系における中・上流部の河川整備の進捗とその影響の検証にかかる委員会」が開催され、今後の河川整備の方向性などを議論。また令和2年7月には「淀川水系関係6府県調整会議」が設置され、淀川水系の更なる河川整備の方向性を調整するための意見交換会が行われることとなった。
 このため、京都府として、淀川水系の更なる河川整備の方向性を検討するにあたり、治水対策や気候変動の影響について知見を有する専門家で構成する技術検討会を設置した。
 初会合で、京都府の富山英範建設交通部長が検討会の論点を示した。主な論点は▽淀川水系河川整備計画に基づく事業の進捗と効果(現状評価)▽淀川水系の更なる河川整備(○近年の降雨傾向や将来の気候変動を踏まえた目標設定○更なる治水安全度向上に必要な事業メニュー)の2点。
 初会合では、淀川水系河川整備計画のこれまでの経緯を概説(平成21年3月…淀川水系河川整備計画の策定、平成31年4月…滋賀県知事が大戸川ダム建設を容認する方針を発表、令和元年6月…中・上流部の河川整備の進捗等について検証(近畿地方整備局)[中上流部の河川改修が大幅に進捗してきたことを踏まえ、上下流バランスを確保した上で流域全体の安全度向上に向け、現在の河川整備計画に沿って、治水対策を着実に推進することが必要。更なる治水対策を検討すべき段階]、令和2年7月…淀川水系関係6府県調整会議(第1回)、令和2年10月…淀川水系関係6府県調整会議(第2回)等)。
 現行の淀川水系河川整備計画の整備目標は、淀川本川が「整備のいかなる段階において、計画規模以下の洪水に対しては、淀川本川の水位が計画高水位を超過しないよう水系全体の整備を進める」、宇治川、桂川、木津川が「戦後最大洪水である昭和28年台風13号を安全に流下」。淀川水系の特徴を踏まえた治水の考え方は「淀川水系の特徴である琵琶湖、狭窄部、三川合流部を踏まえ、上下流バランスを確保しながら、流域全体の治水安全度を向上させる」。
 河川整備の進捗状況は、▽淀川…阪神なんば線淀川橋梁架替(平成29年度着手〜令和14年度完了予定)▽宇治川…宇治川塔の島改修(平成30年度完了)、天ヶ瀬ダム再開発(平成25年度着手、令和3年度完了予定)▽桂川…桂川大下津地区引堤(令和5年度完了予定)、桂川河道掘削(嵐山地区含む)(緊急治水対策→平成26年度着手、令和元年度完了)(嵐山左岸溢水対策→令和元年度着手、令和2年度概成予定)▽木津川…川上ダム(令和4年度完了予定)、▽共通(堤防強化)…淀川(令和元年度完了)、宇治川(平成28年度完了)、桂川(令和2年度完了予定)、木津川下流(令和2年度完了予定)。
 桂川本川(京都府管理区間)の整備は、当面計画(昭和57年出水対応(1/10相当))の河道掘削等が平成21年度に完成。平成22〜29年は護岸整備及び河道掘削を実施(ステップ1)。現在、暫定計画として霞堤1m嵩上げを実施中(ステップ2)。下流との上下流バランスをとりながら、今後、整備計画(昭和28年出水対応(1/30)相当)として霞堤のHWL(HighWaterLevel)までの嵩上げを実施予定(ステップ3)。将来計画(1/100)のメニューとしては霞堤の完成堤までの嵩上げや保津峡の部分開削などがある。
 京都府としての現状評価は、宇治川は▽河道は基本方針レベルまで流下能力を確保▽平成25年台風18号により堤防から漏水が確認されたこと、天ヶ瀬ダム再開発事業の完了により流量が増加すること、沿川の開発状況などを考慮し適切な管理と、必要に応じた堤防強化が必要、木津川は▽河道は整備計画レベルまで流下能力を確保▽平成29年台風21号や令和元年台風19号により、堤防からの漏水が確認されたことから、適切な管理と、必要に応じた堤防補強が必要、桂川は▽この10年で治水安全度は大きく向上したものの、整備計画レベルまでにはまだ大きな乖離がある▽下流部の掘削により早期に平成16年出水対応を完了させるとともに、戦後最大出水対応のための更なる掘削を進める必要がある▽嵐山地区の「一の井堰改築」は関係機関により検討中▽保津峡の部分的開削について、水系全体の河川整備の進捗を図り、検討段階に入ることが必要▽府管理区間の改修は、下流との上下流バランスをとりながら進める必要がある▽日吉ダムの暫定操作の解消により治水安全度向上を図る必要があるが、そのためには府管理区間の治水安全度確保が前提条件となる。
 近畿地整が作成した資料をもとに、国提案の河川整備計画を見直す場合の目標の考え方案を説明。更なる河川整備を行う場合の目標案として、淀川本川が「中上流部の改修を行った後も、現行安全度(計画規模洪水も安全に流下)を堅持」、宇治川、桂川、木津川が「現計画を超える規模となった平成25年台風18号洪水を安全に流すとともに、現計画を超える規模の洪水が発生していない河川においても、着実に安全度を向上させる。これにより、気候変動による降雨量増大にも資する」とした。
 国が提示する大戸川ダムの京都府域への効果については、▽桂川(H29時点河道)において戦後最大洪水(S28洪水)が発生した場合、約9・7q区間(京都市)で計画高水位を超過し、氾濫した場合の被害は約2兆円と想定される▽桂川(H29時点河道)においてS25洪水が発生した場合、約11・0q区間(京都市)で桂川の計画高水位を超過し、氾濫した場合の被害は約3兆円と想定される▽大戸川ダムが整備できれば可能となる洪水調節により淀川本川の流量を低減することで、S28洪水対応の桂川の河道改修や更なる河道改修を実施することができ、桂川の氾濫被害を防止できる−とした。