トップページお知らせ >地方ニュース

お知らせ

地方ニュース

北海道建設新聞社
2020/12/15

【北海道】新型コロナでさっぽろ雪まつり中止へ

 冬の一大イベント・さっぽろ雪まつりが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止する方向になった。中止が決定すれば1950年の開始以来初めてで、観光業をはじめさまざまな産業、そして道内各地に経済的ダメージを与えることは必至だ。建設関連業界も例年、開催に協力していて、中止は大きな痛手になる一方、現在の感染状況から諦めの声も聞かれた。
 秋元克広札幌市長は、10日の臨時記者会見で今冬の雪まつりについて「現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況に加え、より気温が低くなる状況では規模を縮小したとしても、会場を造って誘客する開催は難しい」という見解を示した。

 来週にも開催の実行委員会で最終決定する見通し。代替案として、過去の雪像の映像やプロジェクションマッピングなどのオンライン配信を視野に検討している。

 秋元市長の発言を受けて、北海道トラック協会の西原英二常務理事は「雪まつりの仕事が入らないのは、運送業者にとって大きい痛手だ」と語る。排雪業務に関わる運送業者は、降雪に備えてダンプトラックを確保するため、雪が降らなければ損失が発生する。雪像用の雪の運搬は冬場の収入源として貴重だった。

 大通会場を担当する警備会社は、毎年延べ1日当たり30人程度を動員し警備に当たる。11月まで実行委員会や警察と交通規制や人員配置をすり合わせてきたが、全て見直される。担当者は「予定していた仕事がなくなるのは大変」とする一方、「一市民として状況は厳しいと思っていた。コロナ禍は誰の責任でもないからやむを得ない」と諦めの表情を見せる。

 札幌市内のあるイベント用品レンタル会社は情報を精査中だ。グループに足場など仮設資材のリース企業があり、大通やつどーむ会場の仕事を受けることもあるが、ことしは春から引き合いが弱く「例年通りの開催ができないとなると大なり小なり影響が出る」。

 札幌市内の電気設備工事会社社長は「雪まつりが中止になれば、準備してきた部分もあるので非常に大きなダメージだ。他のイベントも中止やオンライン開催で、仕事量は大きく落ち込んでいる」と肩を落とした。

 さっぽろ雪まつりは、例年200万人以上の観客を集めていて、17年度の経済波及効果は650億円に上り、冬場の北海道経済を支えてきた。

 道経済部がまとめた20年度の宿泊実績によると、日本旅館協会北海道支部連合会に所属する120余りの施設での宿泊者数は、国の緊急事態宣言が継続した5月に前年同月比92.9%減の3万6927人と底を打ったが、その後は「Go To トラベル」などが追い風になり10月には15.5%減まで盛り返していた。しかし現在の感染再拡大に加えて、雪まつりも中止になれば回復傾向に水を差すことになる。

 札幌以外の主要なイベントへの影響について、小樽雪あかりの路の実行委員会は、国や道の指示があれば中止を検討する考え。雪まつりと重なる日が最も集客が良いため、開催しても例年より客足は少ないと見る。旭川市の西川将人市長は10日の記者会見で、旭川冬まつりの開催可否を近日中に判断すると述べた。

 さっぽろ雪まつりの中止は、道内各地で開かれる冬のイベントを見送る引き金にもなり得る。地域経済へのダメージだけでなく、北海道らしさが失われる懸念すらある。地域の知恵を結集した創意工夫で、コロナ禍を乗り越えることが必要だ。