球磨川の流域治水対策の一つとして検討する新たな流水型ダムについて九州地方整備局は、現行の川辺川ダム計画の貯水容量を維持した上で、利水容量を洪水調節容量に振り替えた場合の効果を流域市町村に示した。洪水吐きにゲートを設けることで、洪水調節や貯留が可能になるという。18日の第2回流域治水協議会で説明した。
現行ダム計画の総貯水容量は1億3300万立方b。このうち洪水期の洪水調節容量が8400万立方b、かんがい・発電のための利水容量が2200万立方bで、残り2700万立方bは堆砂容量となる。同規模で流水型ダムとした場合、利水容量を治水に振り替えることで、1億600万立方bを洪水調節容量として活用できる。
今後は、▽位置や構造、流水型ダムへの変更に伴い必要となる貯水池法面の安定性確認のための地質調査▽機能を最大化する洪水調節計画▽追加の環境調査や環境保全措置▽環境保全に必要な放流設備等(流木閉塞対策設備・土砂堆積対策設備)の諸元や構造等|の調査・検討を速やかに進める必要があるとした。
会合ではこのほか、河川区域での各対策メニューの考え方等も示した。河道掘削では、中下流部と人吉地区で、自然環境や川下り等利用環境に配慮した上で、最大限の掘削を実施。上下流バランスにも配慮する。引堤は、人吉地区で現況堤防位置を極力変更せず、川側に突出した箇所のみ河岸拡幅を実施。渡から人吉地区の一部では、水位低下効果が発揮される範囲に限定して引堤する。
輪中堤・宅地かさ上げは、中流部の集落で河川区域対策実施後の水位(計画高水量+余裕高相当)を目標に計画。遊水地は、地役権方式と掘り込み方式の組み合わせで配置を計画し、人吉上流については毎秒300立方b程度の洪水調節が可能な遊水地を計画するとした。
流域市町村からは、「堆砂容量も治水に活用してほしい」「追加の環境調査は必要なのか」「タイムスケジュールを示してほしい」「来年出水期までの対策を急いで」「森林管理にも力を入れる必要がある」などの意見が上がった。
協議会では、年度内をめどに「流域治水プロジェクト」を公表する予定。次回会合で、速やかな実施が必要な緊急治水対策案(支川対策含む)と集水域・氾濫域での対策案を示すことにしている。
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