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建通新聞社(東京)
2021/09/17

【東京】都 葛西臨海水族園の実施方針等公表

 東京都建設局はPFI―BTO方式を活用した葛西臨海水族園の更新に向けて実施方針と要求水準書案を公表した。既存水族園の敷地内に新しい施設を延べ床面積2万2500平方bの規模で整備する。12月に特定事業に選定し、2022年1月に総合評価一般競争入札の手続きを開始する予定。WTO政府調達協定の対象となる見込み。22年9月に落札者を決めた後、同年12月〜27年9月に新水族園の設計・建設を進めてもらう。28年3月の開業を目指している。
 要求水準書案によると、既存の水族園(江戸川区臨海町6)が完成から30年以上が経過して老朽化しているため、営業を続けたまま敷地内に新施設を建設して機能を移す。
 新しい施設には@共用(整備面積約2600平方b)A飲食販売(約1500平方b)B教育普及(約500平方b)C一般展示(約4100平方b)D展示水槽(約1700平方b、総水量4600d)E研究(約500平方b)F飼育(約2700平方b)G管理(約3200平方b)H設備機械(約5700平方b)―の各エリアを設ける。
 このうち飲食物販エリアには380席程度のレストラン・カフェやミュージアムショップを計画。教育普及エリアではレクチャーホールに330平方b程度を割いて150人が生物の生態や環境を学べるようにする。展示の方向性として、ICTなどの先端技術を活用した空間演出や、映像・風・香りなどによって海を体感できる環境づくりに取り組むよう求める。施設の構造や階数などについては提案に委ねる。
 入札には▽施設整備▽開設準備▽維持管理▽付帯業務―を担う複数の企業にグループで参加してもらう。水族園の運営業務は動物飼育の専門性を持つ団体を別途、指定管理者として選定する予定だ。
 設計・建設・工事監理・維持管理のいずれも都の競争入札参加資格有資格者であることを条件にする。設計企業は1級建築士事務所登録が必須。建設企業は直近の経営事項審査で建築一式の総合評点が1200点以上の特定建設業許可業者とする。1989年以降に開業した延べ床面積5000平方b以上の水族館施設を設計または施工した実績など、過去の実績についても業種ごとに要件がある。
 2022年1月に入札手続きを始め、同年4月に応募者との対話を実施して7月まで提案審査書類の提出を受け付ける。22年9月に落札者を決定し、同年12月に事業契約を結んで新水族館の設計・建設に着手。27年9月の完成とその後の開設準備期間を経て、28年3月の供用開始を目指す。事業期間は事業契約締結の翌日から48年3月31日まで。

―既存の利活用へ調査―

 東京都建設局はPFI手法による葛西臨海水族園の新施設整備と並行して、既存施設の利活用に向けた事業性や採算性の調査を進める。「既存施設利活用の基本的考え方」を策定した中で、葛西臨海公園内の立地を生かして自然に親しみながら環境教育を行う場に活用するとの方針を提示。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といったデジタル技術を用いた展示などを通じ、新施設との相乗効果で魅力が高まる施設を目指すとした。一方、利活用には老朽化した設備の更新費やバリアフリー対応のための改修費、維持管理費などを確保する仕組みが必要なことから、民間事業者にヒアリングするなどして情報収集に取り組む。
 既存施設は著名な建築家である谷口吉生氏が設計を手掛けた。ガラスドームが特徴的な建築物で、毎日芸術賞や建築業協会賞(BCS賞)などを受賞している。都民に親しまれるランドマークとなっており、保存活用を求める声が寄せられているという。
 事業性と採算性を精査するため、今後は民間事業者へのヒアリングを実施する他、マーケットサウンディングなどの市場調査も行って情報を集める予定。既存施設は新施設の開園時に築後約40年となることから、新施設へ機能を移した後に状態を調査して利活用の方針を決定する。提供:建通新聞社