東京都はスタートアップ(SU)と協働して、行政課題の解決を目指すプロジェクトに取り組んでいる。ハード事業に関連するプロジェクトもあり、対象は設計・施工、維持管理と幅広い。2023〜24年度に建設局が道路整備の可視化を、東京消防庁が施設の改修・修繕業務の省力化を、水道局が水道管の敷設に先立つ地下埋設物調査の効率化を挙げて協同事業者を公募。課題の解決につながる新技術を持ったSUを選んで実証を進め、これまでに一定の効果を確認した。
〜建設局 道路整備の3Dモデル〜
建設局は、道路整備の地元説明会で参加者から「完成後の姿が分からない」との声が上がったため、整備イメージを分かりやすく可視化したいと考えた。対象は第一建設事務所が担当する環状4号線の港南区間。現道の拡幅や線路をまたぐ橋梁の架設などが内容だ。
そこでBIMプロジェクトを数多く手掛ける峰設計(渋谷区)を協働事業者に選定。詳細設計の図面から整備後のBIMモデルと、周辺の建物のイメージや車、歩行者を配置した3Dモデルを作成し、現道と橋梁の高低差などを立体的に可視化した。
内部調整への活用を通じて、図面では気付かなかった課題も発見。3Dモデルから狭いと判断した歩道の幅員を広げたり、側道の視認性が悪くなることが分かった看板を移設したりするなどの善後策を講じた。
〜消防庁 修繕工事管理システムを開発〜
東京消防庁は築後30年が経過した消防学校第一庁舎の改修・修繕を計画。だが担当者は営繕業務に初めて携わる職員で、設計の発注前に数量を拾い出す業務に膨大な時間を要していた。
このため、狭小空間点検用のドローンを開発・展開するリベラウェア(千葉市中央区)と峰設計を協働事業者に選んで省力化に向けた手だてを探った。
リベラウェアは消防学校第一校舎の天井裏や地下ピットなどをドローンで、その他の居室の一部を地上ライダーでそれぞれ撮影。それらから得た3次元点群データを基に、中水処理室と受水槽室、機械室、講習実習室のBIMデータを作成した。
また、峰設計はリベラウェアのBIMデータに保全情報を入力して、検索や数量の拾い出しができる修繕工事管理システムを開発した。同システムを活用すればワンクリックで数量を拾い出せるため、業務時間の大幅な短縮が実現したという。
〜水道局 非掘削調査で埋設物検知〜
水道局は配水本管の更新や新設に先立つ地下埋設物調査の効率化を目指した。水道管、下水道管、電線、通信ケーブルといったさまざまな地下埋設物は、実際の敷設位置が管理台帳と異なる場合もあるなど、状況の把握に時間を要しているからだ。
協働したのは非開削調査で地盤などのモニタリング業務に携わっているウェーブレット(文京区)。同社の超小型振源装置を使って地下埋設物を調べたところ、5b程度の深さに敷設された水道管などを検知できる可能性を見いだした。ただ、アスファルト舗装の上からの調査が困難だったため、観測方法や仕様を工夫すれば精度の向上が見込めると考えている。
提供:建通新聞社