厚生労働省東京労働局がまとめた2024年の労働災害発生状況(確定値)によると、東京都内の建設業では24年の1年間に11人が死亡、1035人が死傷した。死亡者数は前の年の23年より6人少なく、20年の12人を下回って過去最少だ。死傷者数も前年より64人少なく、20年と21年の978人に次いで過去2番目に低い水準となっている。東京労働局はこれらを「建設業の皆さんの労働災害防止に関する取り組みの結果」(富田望局長)と評価。ただ、今年の25年に入って死亡、死傷のいずれも増加傾向を見せていることから、7月1〜7日の全国安全週間に合わせた建設現場の集中指導などを通じて労働災害防止対策の徹底を求めていく。
24年に建設業の労働災害で死亡した11人の業種別内訳は建築工事業が6人(5人減)、その他の建設業が3人(前年と同数)、土木工事業が2人(1人減)で、建築工事業がほぼ半減。事故の型別では▽「はさまれ、巻き込まれ」=3人(2人増)▽「高温・低温の物との接触」=3人(前年と同数)▽「激突され」=2人(1人増)▽「交通事故(道路)」=1人(1人増)▽「飛来、落下」=1人(1人減)▽「墜落、転落」=1人(5人減)―となっており、「墜落、転落」が大幅に減った。
また、死傷した1035人の業種別内訳は建築工事業が687人(11人減)、その他の建設業が185人(27人減)、土木工事業が163人(26人減)といずれも減少。事故の型別では「墜落、転落」の311人(30人減)が最も多く、「転倒」の128人(16人増)や「はさまれ、巻き込まれ」の124人(8人増)、「飛来、落下」の89人(17人減)、「動作の反動、無理な動作」の74人(18人減)などが続いた。
とりわけ「墜落、転落」の死傷者のうち建築工事業は223人(9人減)と7割強を占めている。起因物別は▽「はしご等」=107人▽「足場」=31人▽「トラック」=28人―などだった。
外国人労働者の建設業での死傷者数は130人で、前年より18人多かった。
東京労働局の富田局長は確定値を発表した5月30日の記者会見で、24年の建設業労働災害が減少した要因について「業界の尽力」を挙げるとともに、7月〜8月上旬の死亡者数の急増や9月に鉄骨梁の落下によって6人が死傷した事故を踏まえて業界に対応を求めたことで、「緊張感があったのではないか」と分析。加えて、施工を巡るDXの活用も奏功しているとの見方を示した。
一方、25年の建設業労働災害では4月末現在で3人が死亡、223人が死傷。前年同期に比べ死亡者数は2人増、死傷者数も7人増で、墜落・転落災害が多く発生している。
このため富田局長は、足場からの墜落防止措置を強化した改正安全衛生規則や同局が提唱する安全衛生管理活動の「4K」(決意表明、高所対策、管理活性化、教育強化)を「周知徹底していきたい」と強調。全国安全週間に合わせた建設現場の集中指導でこれらの取り組みを重点的に点検する構えを見せた。
提供:建通新聞社