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中央ニュース

2021/09/04

第15回建設トップランナーフォーラム(8)

 中部森林開発研究会(中森研)は、鈴鍵(愛知県豊田市)が1983年に森林を通じての環境保全と若手林業後継者の育成を目指し、「中部は一つ」 を合言葉に設立した任意団体で、来年設立40年目を迎える。
 野焼き全盛の頃、環境保全への問題意識を持った同社は海外から移動式の大型破砕機を導入。事務局の丹羽庸介氏は、「当初は、野焼きの何倍もの費用がかかる破砕は全く相手にされなかった」と言うが、公害問題意識の高まりから行政側も次第に野焼きを規制するようになり、徐々に破砕事業が採用されるようになっていく。
 やがて、そうした活動が矢作川沿岸水質保全対策協議会(矢水協)の目に留まり、一緒に環境問題を解決するための共同研究がスタート。竹の枝を束にしてフィルターとして濁水をろ過する竹ソダ濁水処理工法では共同で特許を取得、伐採木の破砕チップによるマルチングや法面緑化工法、またチップをネットに詰めて土止め柵にするフィルターソックス工法などを次々と開発し、樹木廃棄物を100%有効活用するウッドチップリサイクルシステムとして確立するに至った。
 このウッドチップリサイクルシステムを中森研の柱として、全国でさまざまな展示会やデモンストレーション、講演会を実施。この活動の中から、赤土問題に悩んでいた沖縄県、琵琶湖の浄化に悩んでいた滋賀県、雲仙普賢岳の噴火による被害木、広島の豪雨災害の被害木処理など活動をしていくうちに、日本中に仲間が増えた。7社から始まった中森研はピーク時には全国に14支部150社近い会員数にまで成長している。
 かつては木を切ることを嫌悪する意見もあったが、近年は、森林の持つ公益的機能への理解が広まり、低炭素社会の実現や土砂災害を防ぐためにも森林保全が見直されるようになった。また固定価格買取制度(FIT制度)で未利用材が活用されるようになり、間伐事業や森林整備事業も増えた。緑の雇用事業などにより、教育も充実。また木チップからの水素化や、CLT、セルロースナノファイバーなどの新技術、新素材が開発されている。
 しかし、まだまだ林業の収入は低いままだと言う。現在、新型コロナの影響で、アメリカなどの郊外で木材住宅需要が増加し、輸入材価格が数倍に跳ね上がるといういわゆる「ウッドショック」が起こり、日本の木材需要が高まっている。「この機をチャンスと捉え、従事者の安定した生活と収入が林業で得られるようできるよう、林業の担い手を増やし育て、日本の森林を守ることにつなげていきたい」と丹羽氏は語る。
 中森研は、設立から一貫して森林を通じての環境保全と環境に負荷を与えない開発を目指して活動してきた。これは国連が目指す持続可能な開発目標(SDGs) と同じくするところが多々ある。今後も「研究会の目標達成」に向けて、研さんしていく考えだ。
(地方建設専門紙の会)