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2023/11/29

法定福利費明示させず 都道府県で1割超

 都道府県と政令市の発注工事で、発注者が受注者に対して、法定福利費を明示した請負代金内訳書を提出させる取り組みを行っているかどうかを国土交通省が調べたところ、都道府県で1割超、政令市で2割超の団体が実施していないことが分かった。国交省の担当者は、「法定福利費を下請け企業、技能者に行き渡らせるためには、まずは川上から請負代金内訳書に法定福利費を明示する取り組みを徹底していく必要がある」としている。
 国交省は、法定福利費の確保に向けた取り組みに関して、都道府県と政令市に対してアンケート調査を実施。請負代金内訳書に法定福利費を明示させる取り組みについては、都道府県で5団体(全体の10・6%)、政令市で5団体(25・0%)の計10団体(14・9%)が「未実施」と答えた=グラフ参照。
 未実施の理由では、「実施方法を検討中」が5団体で最多を占めた。以下、「企業の負担になる(3団体)」「確認するための体制不足(1団体)」「建設会社が保険料未納でないことを確認している(1団体)」が続いた。
 一方で、「実施している」と回答した団体のうち、都道府県の3団体と政令市の1団体の計4団体では、明示された法定福利費が適切だったかどうかの確認をしていなかった。確認していない理由は「検討中(2団体)」「取るべき措置がない(1団体)」「確認する体制がない(1団体)」とした。
 また、確認していた団体の3割近くが国交省とは異なる方法で確認していた。
 国交省と異なる確認方法を採用している理由については、「発注者側の積算での法定福利費算出方法の妥当性を検討中(3団体)」「法定福利費の概算額は非公表(4団体)」「記載有無のみ確認、金額は未確認(4団体)」「法定福利費の概算額の公表時期が異なる(3団体)」「確認方法は各工事監督員の判断(1団体)」となっている。
 請負代金内訳書は、請負契約後に請負代金の内訳を発注者と受注者で確認し、工事数量の増減などによる契約変更を円滑に行えるよう、受注者が作成しておくもの。
 国交省の直轄工事では、受注者に対して、請負代金内訳書に作業員の健康保険・厚生年金保険・雇用保険の事業主負担額を記載することを標準化している。法定福利費が著しく低い場合、発注者が支払額の適正性を確認する必要もある。
 中央建設業審議会基本問題小員会がまとめた提言では、将来的に標準的な労務費を見える化していく方向性も示されているが、賃金の行き渡りへ、当面は今あるルールをしっかり守っていくことが求められる。

提供:建通新聞社