トップページお知らせ >中央ニュース

お知らせ

中央ニュース

2025/02/26

6月から熱中症対策強化 重篤化防止に法規制

2024年の日本の平均気温は、1898年の統計開始以降で最も高くなり、過去最高を記録した。最高気温が40度を超える地点は9地点で観測され、24年5月〜9月の熱中症の救急搬送も、過去最多となった。気候変動の影響で異常気象が続き、職場での熱中症患者は年々増加している=グラフ参照。厚生労働省は、6月から事業者に職場での熱中症対策を義務付け、猛暑が予測される今夏に備える。
 大半が屋外作業の建設業では、19〜23年に発生した熱中症の死傷者数が886件、死亡者数も54件といずれも全業種で最も多い。過去最多となった24年5月〜9月の熱中症による救急搬送のうち、「道路工事現場、工場、作業所」の搬送者数は9870人に上った。
 厚生労働省は、気温上昇によって熱中症による労働災害の発生リスクが高まっていることを受け、労働安全衛生法の労働安全衛生規則(安衛則)を改正し、事業者に熱中症対策を義務付ける方針を決めた。違反した場合、6カ月以下の懲役か、50万円以下の罰金も科す。
 現行の安衛法では、熱中症への備えとして、多量の発汗を伴う作業場で「塩」(塩飴、タブレット、スポーツドリンクなど)と「飲料水」を事業者に用意することを求めている。ただ、気温40度を超える屋外の作業環境では、こうした措置だけで熱中症を防ぐことができないのは明らかだ。
 今回、厚労省が事業者に熱中症対策の強化を求める狙いは「熱中症が発生しても、重篤化させない」(安全衛生部労働衛生課)ことにある。
 熱中症の恐れのある労働者を早期に発見できるよう、屋外作業を行う事業者に対し、▽熱中症の自覚症状がある労働者を報告するための体制整備▽緊急連絡網・緊急搬送先の連絡先・所在地の把握▽重篤化を防止する措置の実施手順の作成と周知―を求める。
 いずれも、コストの負担を伴わずに対策を講じることができるため、大手建設会社の現場では、すでに同様の対策を実施している現場がほとんどだという。義務化によって「中小建設業の現場にも熱中症を重篤化させない対策を定着させたい」(労働衛生課)というのが、厚労省の考えだ。
 ただ、異常気象下の屋外作業では、重篤化は防ぐことができても、熱中症の発生自体を防ぐことは難しい。厚労省は、安衛則の改正に加え、職場巡視や「バディ制」の採用、ウエアラブルデバイスの活用を通達で推奨する他、熱中症の予防対策に関する有識者会議を立ち上げ、さらなる対策を検討する。

提供:建通新聞社