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2012/11/08

財務省「社会資本の拡大は困難」 公共事業の在り方で論点整理

 財務省は、今後の公共事業の方向性について「社会資本ストックの大幅な拡大を指向していくのは困難」などとする論点整理をまとめ、7日に開いた財政制度等審議会財政制度分科会に報告した。論点整理では、新規投資が長期的に効果を発揮するか「慎重に判断すべき」との見解を示した上で、既存ストックの有効活用の重要性を指摘。ただ、人口減少などの経済社会構造の変化により、既存ストックの維持管理・更新の必要性が低下する可能性についても言及した。
 近年の公共事業費は、2009年度の7兆0701億円から12年度に4兆5734億円と約35%減少した。13年度の公共事業費は、東日本大震災の発生に伴う減災・防災対策の充実を求める声がある一方で、復興財源を活用する「全国防災対策費」の被災地外使用が問題視されるなど、削減の流れを転換できるかの見通しは不透明な状況にある。
 財務省が示した論点整理は、13年度予算を含めた中長期的な公共事業費の基本的な方向性を示したもの。社会資本ストックの新規投資については、急速な少子高齢化と人口減少が見込まれる中で「厳しい財政事情の下、維持管理に一定の経費がかかる」と前置きし「大幅な拡大は困難」と公共事業費増加への動きをけん制している。
 これに加え、事業評価の費用便益分析で採用されていない便益項目の追加などについて「便益が低い事業の救済を意図した見直しを行っているのではないかとの疑念を生じることのないよう説明責任を果たすべき」などと具体的に指摘した。
 社会資本ストックの老朽化が急速に進み、大幅な増加が見込まれる維持管理・更新については、社会資本整備の進捗(しんちょく)や経済社会構造の変化を反映し「個別の社会資本ストックの維持管理・更新の必要性が低下していく可能性も念頭に置いておくべき」と不要になったストックの廃止も示唆している。
 また、個別事業のコスト縮減について、技術基準の見直し、積算の合理化、ライフサイクルコストの縮減、ICTの活用など、新技術や知見を最大限取り入れる取り組みを進めるよう求めた。PFIなどの民間活力の活用では、料金収入を得られる「独立採算型」の導入を推奨。事業費を分割払いする「サービス購入型」については「公費支出の繰り延べとなる側面がある」との懸念を示した上で「これにより過大な事業が実施されるようなことになれば本末転倒」と批判した。
 このほか、入札契約制度については、国交省の直轄工事で一般競争入札(総合評価方式を含む)の導入が約99%に達するなど、改革の着実な進展を評価する一方で「最近においても官製談合問題が生じているのは問題であり、事実関係の調査と徹底した再発防止策を講じるべきではないか」と一層の改善を求めた。

提供:建通新聞社