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2018/05/22

連載「どう生かす 建設キャリアアップシステム」第2回

■第2回 「人を育てる」メッセージに
 国土交通省 毛利信二事務次官

 2015年5月に開かれた「建設産業活性化会議」で、国土交通省と主な建設業団体は、技能と経験を見える化する就労履歴管理システムを構築することで合意した。今、就労履歴管理システムは建設キャリアアップシステムと名を変え、この秋の稼働を控えるに至っている。毛利信二国土交通事務次官は、当時、建設産業行政を預かる土地・建設産業局長として「入り口で止まった状態だった」というシステム構築を前進させる判断を下した。この判断の理由は何だったのか。どのような想いだったのか。毛利事務次官に話しを聞いた。毛利次官(連載)@_1

―建設業と現場に従事する技能者の現状をどうみていますか。
 「自然災害が激化する中で国民の安全安心を守り、人口減少社会にあっても経済活動の基盤を造り、支えるのが建設産業の役割。その重要な役割はこれからもいささかも変わるものではない」
 「その建設産業は、現場で汗を流す技能者によって支えられ、初めて成り立つ産業だ。技能者の処遇を改善し、計画的に休みが取れ、安心して子育てできる環境を整えなくてはならない。遠くない将来、高齢者の大量離職が見込まれている。この環境を整えることは待ったなしの状況にある」
 「公共工事設計労務単価の上昇、社会保険加入対策の効果もあり、現場の処遇は確実に改善しつつあるが、他産業と比べればまだまだ心もとない。今こそ、業界一丸でさらなる処遇改善を目指し、総力戦を展開する必要がある」
 
―システムは技能者の処遇改善にどのような役割を果たすのでしょうか。
 「技能者の処遇は本来どうあるべきなのか。私は、個人個人の技能や経験に応じた処遇を技能者が受け、さらにキャリアに応じて向上する、この『当たり前』を実現することだと考えている」
 「そのためには技能者一人一人の現場入場記録や保有資格を客観的に把握、蓄積するこのシステムが欠かせない。この仕組みがあれば、例えば、子育てのためにいったん現場を離れている技能者も安心して職場に戻ることができる。建設産業は技能者の技能・経験を評価し、それにふさわしい処遇を実現できる職場に変わることができる」
 「3年前、当時の担当局長として、システムの実現へ向けて動き始めたのは、担い手確保の重要なツールになると信じたからだ」

―システムが稼働することで、建設業がどのように変わることを期待しているのですか。
 「システムが業界全体に定着すれば、建設業は『現場で働く技能者を最も大事にする、人を育てる産業である』というメッセージが世の中に届く。そのことが建設業に担い手を呼び込む上で最大の効果を生むことになるだろう」

―システム登録に踏み切ることのできない中小の元請け、専門工事業に何を伝えたいですか。
 「建設業を取り巻くさまざまなプレーヤーが今、力を合わせて技能者を育てようと取り組み始めている。システムの利用料金は、中小零細事業者が多いことを踏まえ、会社規模に応じた、無理のない範囲で設定されている。小規模な現場でシステムを利用しやすくする具体的な工夫も考えられている。現場の書類作成の手間を軽減するメリットも期待できる」
 「今月からシステム登録が始まった。国交省は今後ともさまざまな形で支援していく。今も、関係する職員は業界にシステム構築の意義を納得してもらえるまで説明する、という気持ちで臨んでいる。他産業に負けないためにも、技能者を育て、支えるこのチームの一員に加わっていただくことを期待している」

提供:建通新聞社