トップページお知らせ >中央ニュース

お知らせ

中央ニュース

2019/10/23

原点回帰〜複業で地域を支える〜

第14回建設トップランナーフォーラム(12) 
第4部 大震災からの復興 地域木材を使ったスクラムかみへい住宅

■地元産木材で復興住宅

 柏館氏_1「大震災からの復興 地域材を使ったスクラムかみへい住宅」がテーマとなった第4部。東日本大震災後に被災者の住宅再建に向け、岩手県釜石市、遠野市、大槌町の木造住宅関係者が集結。地元の木材や技術で安全・安心な木造住宅を供給する仕組み構築し、地域雇用にも貢献してきた取り組みを、上閉伊地域復興住宅協議会(釜石市)の柏舘旨緒会長と釜石地方森林組合(同)の高橋幸男参事が発表した。

 発表に先立ち、同協議会の発足当初から関わりのある慶應義塾大学の伊香賀俊治教授と建築技術支援協会の片岡泰子理事が登壇。同協議会の役割や特徴などを説明し、今後も支援を続けていく考えを示した。

 柏舘会長は、震災時に建築士会の支部長を務めていた。2011年に遠野市と日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)森林再生事業化委員会からの呼び掛けで、上閉伊地域林業・木材・住宅振興協議会(12年2月に現在の上閉伊地域復興住宅協議会に名称変更)を結成。「スクラムかみへい住宅」として、仕様などを固めていった。

 同住宅は、六つの基本プランをベースに、設計変更できる自由設計。設計・施工ガイドブックや、長期優良住宅に対応可能な「こだわり仕様」の設計・施工マニュアルも準備。これまで、自力再建住宅56棟と釜石市災害公営復興住宅42棟の、合わせて約100棟を整備した。

 被災当時を振り返り、柏舘会長は「現地では中古の発電機やポンプを修理できる人が必要。大工や電気工事、給排水設備工事に携わっている職人を守り、技術継承も必要」と訴えた。

 震災の津波で釜石地方森林組合の事務所は流出し、役職員5人が命を落とした。当初、存続すら危ぶまれたが、高橋参事は「組合員や遺族らの後押しで事業を再開することができた」と話す。

 震災後、自力再建住宅や災害公営住宅の必要性が高まり、震災前に発足していた釜石木材利活用懇話会で検討を進めていった。JAPIC森林再生事業化委員会の米田雅子氏からの助言を受け、11年に上閉伊地域復興住宅協議会が発足。木材供給の立場から参画し、10・5a角材を連結しパネルにした「森の貯金箱」工法を提案。

 現在は、上閉伊木材流通協議会を発足させ、住宅のみならず木製品開発なども実施している。釜石鵜住居復興スタジアムに、木製シート、木製ルーバー、木製トイレなどを納入した。

 高橋参事は、「今回の取り組みで震災後に新たな職員として14人を雇用した。今後も『ワン・フォー・オール・オール・フォー・ワン』を合言葉にスクラムを組み、地域の雇用拡大と技術継承に努めていきたい」と決意を新たにした。(地方建設専門紙の会)