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中央ニュース

2019/10/30

原点回帰〜複業で地域を支える〜

第14回建設トップランナーフォーラム(13) 
第4部 大震災からの復興 地域材を使ったスクラムかみへい住宅 アドバイザーコメント

■他分野でも参考に 林業の課題解決

 第4部では「大震災からの復興 地域材を使ったスクラムかみへい住宅」と題して、岩手県の上閉伊地域復興住宅協議会会長の柏舘旨緒氏と、釜石地方森林組合参事の高橋幸男氏が事例発表した。発表に対してアドバイザーを務めた復興庁統括官の東潔氏は、他の分野でも参考になると評価。同じくアドバイザーの林野庁次長の本郷浩二氏は、林業の抱える課題解決のモデル事業として全国に発信してほしいと呼び掛けた。

 東氏_12011年3月11日に発生した東日本大震災で未曾有の被害に見舞われた岩手県釜石市。柏舘氏らは、釜石市、遠野市、大槌町(旧上閉伊〈かみへい〉地域)の林業・製材業・設計事務所・工務店など木造住宅に関わる事業者が集まって「上閉伊地域林業・木材・住宅協議会」(のちに上閉伊地域復興住宅協議会)を結成。地元の資材、職人で地元住民のために役立つことをモットーに復興住宅の建設に取り組んだことを発表した。

 東氏はまず復興に際して、建設業の果たしてきた役割に謝意を示した。発災から8年の経緯を振り返りながら、釜石市などでは防災集団移転促進事業について18年度末に一定の目途がついたと説明。その上で、釜石市や大槌町では宅地があっても住宅が立っていない状況があるとし、協議会の取り組みなどにより少しでも住宅ができていくことを期待した。協議会の取り組みについては「材料調達から消費者までの距離が近く、地元で完結している。低価格で地場産品を活用して住宅を建築していることが素晴らしい」と評価。感銘を受けた点として、山から木材を調達・製材し、設計も仕様を標準化するなど材料調達から建物の完成までシステム化されていることを挙げた。これらについて、「水産加工や観光など他の分野でも参考にできる取り組みだ」と話した。

 本郷氏は「災害などで住民たちが愕然とするのは住宅を失うこと。そして住宅再建について思い悩んでしまう」と指摘。スクラムかみへい住宅の取り組みは、低価格で建築でき、サプライチェーンも確立されていることから、日本の林業の課題解決につながると講評。また釜石市だけではできなかったことが、遠野市や大槌町と連携することで可能になった点を評価するとともに、住宅の仕様が決まっていたので、木材加工が丸太の長さ調整だけで済むことが良かったと指摘した。

 大工や設備工事の職人らを守るべき人として挙げたことには「まさにその通り。人口減少を迎えていく中、どうやって地域を守るのかを考えるのが行政の課題」と話した。最後に「今回の取り組みは価値あるもので、今後も継続してもらい、全国に発信してほしい」とエールを送った。(地方建設専門紙の会)
 ※登場者の肩書は6月28日時点のものです。