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中央ニュース

2021/08/07

建設トップランナーフォーラム(4)

 寿建設(福島市)の森崎英五朗社長は「建設業が一般から認識されていない。人口減少社会で担い手を確保するためには、興味を誘う仕掛けが大事」と、さまざまな視点から他分野の専門家と連携した広報に取り組んでいる。
 同社の得意分野はメンテナンス関連。認知度の低さが人手不足の原因の一つと考えていた森崎社長は、写真家の山崎エリナ氏に自社現場の撮影を打診。月1回のペースで約1年半にわたり、草刈りやトンネル補修、除雪などを行う社員の姿を写真に収めてもらった。
 厳選した写真を公開した地元での展示会には5日間で350人以上が来場。作品は業界内で話題となり、写真集を出版したところ、多くのメディアで紹介されるなど反響を巻き起こした。一連の取り組みは第3回インフラメンテナンス大賞の国土交通省優秀賞を受賞。その後も山崎氏は建設関連の写真集を発売し、建設業のPRに一役買っている。
 森崎社長は、所属する日本トンネル専門工事業協会のPR動画の制作も担当した。山崎氏との活動からプロの力が必要と感じ、アニメ制作会社を営む旧友にプロデュースを依頼。「トンネルを面白いと思うきっかけづくり」をコンセプトに、トンネル工事特有の慣習や豆知識を集めた「トンネルあるある」のショートアニメ(17秒)を25本作り、ユーチューブで公開、新聞等で取り上げられた。
 動画による広報に取り組んでいたころ、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、報道等で先の見えない状況を「暗いトンネル」と表現するニュースが増えた。トンネルのイメージダウンを懸念した森崎社長はトンネル工事の「貫通光」に注目。協会員等から貫通時の写真を募り、コロナ禍からの脱却を願う「希望のトンネル貫通シリーズ」と題して協会インスタグラムに写真をアップした。1カ月でフォロワーが数百単位で増えるなど話題を呼んだ。
 森崎社長のアイデアが発端となり開発された重機操作シミュレーションアプリ「重機でGo」は、無料版が6万ダウンロードを記録。イベントの体験コーナーは子どもの人気を集め、重機への憧れにつながるツールとして期待が大きい。土木工事の社会的意義を若者に伝える必要があると感じていた時期に出会った書籍「土木のこころ」(田村喜子著)は、当時の出版社の廃業を知り、著者の遺族に了解を得た上で旧知の出版社に働き掛け、今年3月に復刊した。
 森崎社長は「建設業の魅力発信は重要だが、PRしてもなかなか届かない」と述べ、建設業以外の視点も取り入れた、さまざまな切り口からの広報を呼び掛けた。
(地方建設専門紙の会)