国土交通省は、中小企業にICT施工を普及・拡大させるため、2022年4月にも小規模ICT施工を直轄工事で導入する。導入に備え、施工要領や、小型建設機械・スマートフォンを活用したICT施工技術の基準類を検討するため、有識者と関係機関・団体からなる「ICT普及促進ワーキンググループ」を立ち上げ、8月27日に第1回会合を開催。今後の進め方を確認した。
ワーキンググループは全4回の開催を予定。2回目(10月6日)に国土技術政策総合研究所(国総研)の建設DX実験フィールドで、小規模現場に対応した新たなICT技術を試行し、効果を確認する。試行結果を踏まえ、小規模現場のICT施工要領案を作成し、第3回会合で提示。委員らの意見を踏まえ、第4回会合(22年2月上旬)までに要領を固める。
小規模現場に導入するICT技術は、マシンガイダンスなどのICT機器を後付けした小型建設機械と、スマホ端末などの汎用(はんよう)機器を想定している。スマホについては、LiDAR(Light Detection and Ranging)機能搭載の端末を使った出来高計測や、アプリケーションが開発・実用化されており、現場試行で精度を確かめる。
現場試行では、民間企業からアースブレインとトプコンの2社が小型建機を、大成ロテックとオプティムの2社がスマホなどを活用した測量・出来高計測のICT機器を、それぞれDX実験フィールドに持ち込み、地下埋設物模型などを実際の現場に見立てて稼働させる。
ICT施工は、直轄工事など大規模な現場を施工する大手企業で導入が進む一方、中小、零細企業への普及が遅れている。こうした中、小型建機を活用したICT施工のニーズが高まるとともに、汎用製品を使った新技術の開発が進んできたため、国交省は中小企業が小規模現場でICT機器を活用しやすい環境整備を直轄現場で急ぎ、ICT施工のさらなる浸透を狙う。
国交省では、いまのところ小規模土工、床掘工などへの小規模ICT施工の導入を想定している。
ワーキンググループは、立命館大学理工学部の建山和由教授が座長を務める。構成員は国総研や農林水産省、ICT導入に積極的に取り組んでいる地方自治体(茨城県、兵庫県、山口県、埼玉県)。オブザーバーとしてICT導入協議会会員の日本建設業連合会、全国建設業協会、建設産業専門団体連合会、日本建設機械施工協会、日本建設機械レンタル協会、建設コンサルタンツ協会などが参加している。
建山座長は「ICT施工の本来の目的は省人化や省力化により、現場の生産性を高めること。3次元データに限らず、現場作業の改善や安全につながる有用な技術があればこの場で導入を検討したい」とした。
提供:建通新聞社