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中央ニュース

2021/09/11

第15回建設トップランナーフォーラム(9)

 地域建設業が深刻な人手不足という問題に直面している。第4部では「地域の担い手をどう育てるか」をテーマにパネルティスカッションを行った。「若者の定着には何が必要か」「多様な人材を育てるにはどうすればいいか」「限りある地域の人材をどう生かしていくのか」−。地域建設業の人材確保・育成にスポットを当てた。
 パネラーは国土学総合研究所長の大石久和氏、農林中金総合研究所理事長の皆川芳嗣氏、小野組(新潟県)社長の小野貴史氏、建設トップランナー倶楽部代表幹事の米田雅子氏。コーディネーターを荒木コンサルティングオフィス代表の荒木正芳氏が務めた。

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 国内の人口減少が続いている。2019年に初めて出生数が90万人を割り込み、20年には84万人台となった。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、21年はさらに減少する見込みだ。大石氏は「他産業との人材の取り合いが加速する」と将来を予見した上で、担い手不足の解消には「『建設業で働くことが他産業で働くよりも楽しい』と思える状況をつくること」が前提になると話す。
 では、こうした状況の中で、具体的にどう人材を確保・育成していけばいいのか。皆川氏は、学校などとも連携して若い世代に仕事の内容を伝えていくとともに、日本経済や生活を支えているという「意義を伝えるコミュニケーションが必要」と説いた。
 技術者・技能者の教育に力を注いでいる小野氏は、自身が代表を務める教育機関「和合館工学舎」の取り組みなどを紹介した。困難な時にこそ教育が必要であり、「教育と建設業はいま以上にコラボレーションすべき」と強調。米田氏も「人材育成こそが建設業経営の原点」だとするとともに、手間暇をかけて『世のため人のため』の仕事をすることが担い手育成にもつながっている」と地域での取り組みを促した。
 すでに建設業でも、高齢者や女性、外国人の活躍を促す環境づくりも進んでいる。小野氏は、こうした取り組みと合わせて、「障害者雇用を進めるべき」と持論を展開した。現場には危険な作業もあり、臨機応変な対応なども必要になることは事実。一方で「建設業は十分にチャレンジしてきたのか。一度実証すべきではないか」と話した。
 これを受けて皆川氏は、農業分野の事例として、知的障害者が農業機械の運転を担っているケースなどを紹介。外国人や高齢者なども含め、多様な人材に活躍してもらうためには「『できるわけがない』という固定観念を取り払うべき」と協調した。米田氏も、ICTなど新しい技術を生かすことで、「これまでとは異なる人材が活躍できる機会が増えている」とし、さらなる人材活用の多様化に期待を寄せた。=「下」に続く=
(地方建設専門紙の会)