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中央ニュース

2021/09/18

第15回建設トップランナーフォーラム(10)

 パネルディスカッションのテーマは「地域の担い手をどう育てるか」。国土学総合研究所長の大石久和氏、農林中金総合研究所理事長の皆川芳嗣氏、小野組(新潟県)社長の小野貴史氏、建設トップランナー倶楽部代表幹事の米田雅子氏が議論した。コーディネーターは荒木コンサルティングオフィス代表の荒木正芳氏。

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 急激な生産年齢人口の減少により、特に地方部では地域全体の人手不足の問題が顕在化している。「限られた人材を地域内で共有する新しい発想が必要」という視点で議論が進んだ。
 米田氏は、多くの地域と関わってきたこれまでの経験から、すでに「過疎化の進んだ地域では、一人が複数の仕事を担っている現状がある」と指摘。「(建設業や農林水産業などの)業種を越えて地域に貢献している取り組みに学ぶべき。そこに日本の将来の姿があるのではないか」と話した。ICTなどの最新の技術も取り入れながら、製造業や観光業、福祉なども含めた産業間の連携を深める取り組みが突破口になる。
 これを受け、小野社長は最近の傾向として「建設業で社屋を建て替える会社が増えている」と続けた。建て替えの理由は「地域の多様な人材を受け入れる状況を作り出す必要がある」からだと言う。防災施設や託児所、レストランなどを新社屋に取り込む事例などを挙げ、「まさに建設業が地域と一体になろうとしている表れではないか」と分析した。
 大石氏は、今回のコロナ禍で世界的にも都市部から地方部に移り住む流れがでてきていることを紹介。日本にも美しい自然と水があり、例えば、そこで子供を育てることに価値を見い出す若者がさらに増えるのではないかと言う。その上で、政府の政策として「都市部から地域に人を引き寄せることを進めるべき」だと訴えた。
 今回の建設トップランナーフォーラムでは、さまざまな手法で人材を育て、地域の多様な人材を活用している事例が紹介された。フォーラムでの発表なども踏まえ、小野氏は「人を育てるのは現場。やはり現場がなければ何も教えられない」と感想を述べた。米田氏は、発表事例の多くが地域社会や人に貢献し、地球環境の改善にもつながる取り組みであったとし、「一所懸命に働き、社会や人に役立ち、それが自分の生きがいになる。良い循環ができれば人は育っていくはず。建設業はそうしたことができる仕事だと信じている」と結んだ。
 最後にコーディネーターを務めた荒木氏が、フォーラムでの発表やパネルディスカッションの議論を総括し、「担い手確保の問題に真正面から取り組み、建設業が基幹産業としてさらに発展していくことに期待したい」とまとめた。(おわり)
(地方建設専門紙の会)