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中央ニュース

2022/08/08

第16回建設トップランナーフォーラム(4)

 大高建設(富山県黒部市、大橋聡司社長)は、黒部川流域を舞台に土木・建築を幅広く手がけ、「黒部川の防人」としての強みをより固めつつ、再生可能エネルギーを切り口とした事業に先駆的に取り組んでいる。
 地元の宇奈月温泉は、観光客の減少や自動車排気ガスの問題を抱える一方、豊かな水や地熱、森林の地域資源に恵まれている。2009年から産学官連携の「でんき宇奈月」を立ち上げ、活動を開始。13年に一般社団法人化した。代表理事を務める大橋社長は、「自然エネルギーと低速電気バスによる公共交通事業を導入し、先進的なエコ温泉リゾートとして観光客を誘致するとともに、エネルギーの地産地消による自立した地域づくりを推進している」と強調。温泉街の魅力創出や環境改善を図り、さらに再エネ活用による活性化、共生型社会を目指す。
 低速電気バスを開発し、3台のバスが温泉街周回と宇奈月ダム湖畔往復の2コースで運行。温泉街のシンボリックな乗り物として、「時速19`以下の低速で安全・安心に走行する設計思想は、今日のグリーンスローモビリティの基準となっている」と指摘する。温泉街の水路を利用して14年から小水力発電を行っており、「出力2・2`hと小さいが、電気バスの充電に供給し、街灯にも活用している」とし、再エネ地産地消モデルの実践を挙げる。
 12年には、地域の地産エネルギーによる低炭素型まちづくり事業をスタートさせた。温泉発電の実用化を目指すとともに、未利用温泉熱を利用した無散水融雪システムを同社の駐車場に整備。木質バイオマスの利活用では、黒部市が保有していた温泉宿泊施設を買い取り、「周辺の間伐材、黒部川の流木を使った薪ボイラー、温泉や井戸水による熱利用ヒートポンプを取り入れた」と説明、再エネの発信拠点として再生した。薪づくりには、自立支援施設「宇奈月自立塾」の塾生にも加わってもらい、林福連携の地域内エコシステムを構築。宇奈月温泉の各種施設に薪ボイラーの導入を進める。
 このほか、黒部川高水敷樹林の資源化による脱炭素化とレジリエンス向上に着手している。過剰繁茂する河川樹木を伐採しているが、これを廃棄物ではなく資源化して利用するもの。「大学との共同研究段階だが、ICT技術を駆使して効率化を図っていく」と今後の具体的な成果に期待を寄せる。
 さまざまな再エネを活用した事業を積極展開。大橋社長は、「地域の課題解決や雇用の創出なども図り、その地方ならではの地域資源を活かして、持続可能な社会の形成に取り組んでいきたい」とさらなる地域貢献へチャレンジを続け、宇奈月モデルを広く発信していく。(地方建設専門紙の会・北陸工業新聞社)