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中央ニュース

2022/09/20

「Catch-up」 アナログ規制の見直し

 政府が、法律や政令、省令によるアナログな規制の見直しを加速させている。6月には、岸田政権の肝いりで設置したデジタル臨時行政調査会が「臨場」や「目視」など建設業界にも深く関わる規制約4000件の見直しを表明。フロッピーディスクを用いた行政手続きの撤廃も俎上(そじょう)に載せた。河野太郎デジタル相は会見で、民間の提案、要望を踏まえながら取り組みをスピードアップする考えを再三、示している。
 規制の一括見直しは、日本の社会全体の生産性向上を狙ったものだ。例えばデータ提出の媒体に、フロッピーディスクや光ディスク、磁気テープなどの使用を求めている法令は多数あり、行政手続きをオンライン化する際の障壁となっている。こうした規制を見直すことで人の手の介在をなくし、あらゆる産業で深刻化する人手不足に備えるのだという。
 6月までに約1万の法令を点検し、約4000条項について見直し方針を確定。残る約3万の通知・通達も含めて見直しを進め、今後3年間で規制を一掃する。新たな規制が生まれないよう、提出予定法案を審査する組織もデジタル庁内に立ち上げた。
 ターゲットとなる規制は、▽目視▽実地監査▽定期検査・点検▽書面掲示▽常駐・専任▽対面講習▽往訪閲覧―に大別される。複数省庁の所管法令に共通する類似した規制を一括して見直し、スピーディーな改革を目指す。
 建設業界でも、技術者の専任配置や、道路の近接目視点検など多くの規制が該当する。建設業法に基づく技術者配置については、遠隔臨場技術の活用を前提に2現場の兼任を可能とするなど、見直し方針が既に示されているものもある。
 実際に規制を見直すには、アナログな手段を代替できるデジタル技術が必要になる。このため、企業や有識者へのヒアリングを通じ、代表的な規制に対応した技術を示す「テクノロジーマップ」を整備する。例えば「対面講習」にはウェブ会議、「目視」での点検や巡視にはカメラ、センサーなどが対応。単に手段を置き換えるだけでなく、インフラの老朽化点検でカメラから得たデータを画像診断に生かすなど、デジタルの強みを生かした業務の改善にも取り組む。
 企業から有用な技術を募り、カタログ形式で公開することも検討する。スタートアップ企業をはじめ、先進的な技術を持つメーカー、ソフトウエア企業の成長にもつなげる。
 法令の見直しを社会全体の生産性向上につなげるには、企業もまた自らの業務の流れや慣習を変えなくてはならない。コロナ禍を契機として、建設業界ではウェブ会議や遠隔臨場が一挙に浸透した。より広範囲、かつ急速な変化に対応する上で、これからが正念場になりそうだ。

提供:建通新聞社