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2022/09/29

事前移転促進へ 補助限度額を撤廃

 国土交通省は、災害危険エリアからの住居の事前移転を促すため、「防災集団移転促進事業」の補助限度額を撤廃する方向で検討に入った。補助率のみで補助額を決めるようにする。東日本大震災での活用実績をみると、大半のケースで補助対象経費の合計が補助限度額を超えていた。超過分を全額負担する自治体にとって、事後移転と比べ、建物の除却などで負担がかさむ事前移転を進めにくい状況となっている。
 防災集団移転促進事業は、自然災害が発生した地域または災害の恐れのある区域に住んでいる住民に、安全な場所に移転してもらうため、移転について住民と合意形成ができた自治体に移転経費の一部を補助するもの。1972年の豪雨災害を受け創設した。補助率は移転経費全体の4分の3。全体経費には住宅の除却などの建物補償費、移転先の用地取得・造成・住宅建設費、計画策定費が含まれる。補助率とは別に1戸当たり1655万円の補助限度額がある。
 東日本大震災での活用実績をみると、1戸当たりの全体経費(平均)は、事後移転で2616万1000円となり限度額の1・6倍に、事前移転では4976万5000円と限度額の3倍に達した。
 事前移転での自治体の負担額は全体経費から限度額を差し引いた3321万5000円となる。仮に10戸を事前移転したとすれば、自治体の総負担額は3億3215万円(1戸当たり3321万5000円×10戸)となる。小規模な自治体にとっては大きな負担と言える。
 このケースで限度額がなければ、全体経費の4分の3となる3732万3750円が補助額となる。全体経費から差し引きした自治体の負担額は1戸当たり1244万1250円(10戸で1億2441万円)に抑えられる。限度額がある場合と比べ4割近い負担軽減となる。
 国交省では、市町村の負担軽減の観点から、都道府県が施行者にもなれるよう2021年度に制度を見直したが、事前移転の活用実績は島根県美郷町での1件にとどまっている。同町では対象住居の高台への事前移転を計画。経費の一部を河川事業で捻出できたため、自治体の負担が膨らまずに済んでいる。
 国交省では限度額を撤廃することで、自治体に防災集団移転促進事業の検討を促し、事前防災によるまちづくりを進めるとしている。

提供:建通新聞社