トップページお知らせ >中央ニュース

お知らせ

中央ニュース

2024/03/15

強靱化で4割軽減 首都直下の被害額

 土木学会の国土強靱(きょうじん)化に関する小委員会(委員長・藤井聡京都大学教授)が3月14日に会見し、今後発生が想定される大規模災害による経済被害を、強靱化対策によって大きく軽減できるとする試算結果を明らかにした。首都直下地震では、21兆円以上の事業費を投じることで総額954兆円に及ぶ経済被害を4割ほど減らせるという。藤井委員長は「財政の観点からも、防災投資は合理的だということを認識してほしい」と強調した。
 首都直下地震については、現状では954兆円の経済被害、47兆円の資産被害が生じると算定。税収減や復興費の負担によって基礎的財政収支は389兆円の赤字になるとした。
 こうした被害を防ぐためには、道路や港湾の整備、建物の耐震強化などに21兆円以上の費用が必要になると試算。その結果、経済被害を369兆円分減らせると見込んだ。基礎的財政収支の赤字額も151兆円圧縮できることから、大規模なインフラ投資は財政健全化に効果があると指摘した。
 また、巨大高潮災害の被害と、海岸堤防整備の効果についても推計。東京湾ではインフラ対策に5000億円を投じることで、55兆円の経済被害の70%分までを軽減できるとした。伊勢湾では1兆3000億円を投じることで68兆円の被害を41%減らせると試算。大阪湾は9000億円のインフラ対策で、114兆円の被害を23%軽減できるとした。
 気候変動により見込まれる戦後最大クラスの洪水については、河川堤防の整備などに40兆円を充てることで、257兆円に及ぶ被害を全面的に防ぐことができるという。
[財政健全化に得策]
 一連の推計を基に、報告書では、「長期的な視点から見れば大規模な強靱化投資の方が財政健全化にとって得策である」と結論づけ、インフラ対策の必要性を指摘した。
 今回は小委員会による中間まとめの報告という位置付け。今後、南海トラフ地震についても最新データに基づく被害と対策について試算をまとめる。

提供:建通新聞社