政府は3月15日、技能実習法と入管法の一体改正案を閣議決定した。技能実習制度を見直し、新たな在留資格「育成就労」を新設する。3年間の就労期間で特定技能1号に移行できる人材を育てる。就労者本人の意向で受け入れ先を変える「転籍」も就労後1〜2年で可能とする。公布から3年以内に施行する。
外国人材に技能を身に付けてもらうという技能実習の趣旨と、人材確保という実態のずれを解消する。環境が劣悪でも就労先を変えられない現行制度を見直し、失踪者が相次ぐ現状からの脱却を目指す。育成就労は特定技能の入り口として明確に位置付け、産業分野も一致させる。分野別方針により受け入れ見込み数を設定する。
育成就労計画の認定に当たっては、業務や技能、日本語能力などの目標とともに、受け入れ機関の体制や外国人が送出機関に支払った費用を含めて基準への適合を確認する。
現行では原則認めていない、本人意向による転籍も認める。同一機関での就労期間が1〜2年以上であることや、A1〜A2相当の日本語能力試験への合格を要件とし、詳細は産業分野ごとに決める。
現行の監理団体に代わる監理支援機関に外部監査人の設置を許可要件とするなど、ガバナンスを強化する。外国人技能実習機構は外国人育成就労機構に改組し、転籍支援や特定技能外国人の相談援助を担わせる。
入管法を合わせて改正し、不法就労活動をさせた際の罰則を引き上げる。永住者の増加に備え、許可制度も明確化する。この他、3カ月を超えて在留する外国人が原則、常時携帯する「在留カード」をマイナンバーカードと一体化できるようにする。
■長期にわたる受け入れを前提に
22年に失踪した建設業関係の技能実習生は4717人で、失踪者全体の半数以上に上る。外国人の受け入れ環境に、国内外から厳しい視線が向けられていることを一層、意識しなくてはならない。
育成就労は特定技能への移行を前提とした制度となる。技能だけでなく日本語能力を含め、長期にわたって人材を育成する視点が受け入れ機関に求められる。
建設業では、転籍が可能となったことで、地方から都市部への人材流出を懸念する声も聞かれる。外国人が働き、生活しやすい環境を、自治体も巻き込んで整えていく必要がある。
提供:建通新聞社