勤労者退職金共済機構の建退共事業本部は、掛金日額を上乗せできる「複数掛金」を導入し、建退共の退職金額1000万円超を目指す方針を打ち出した。建退共の加入者が掛金を40年間納付した場合、受け取れる退職金は426万8000円。複数掛金の導入によって、技能者の処遇を大幅に改善する狙いがある。
労働政策審議会の中小企業退職金共済部会は、技能者を雇用する事業主や元請けが掛金を上乗せできる複数掛金制度の導入を検討するよう、厚労省に提言した。同じ提言では、建退共の予定運用利回りを1・3%から1・5%に引き上げることが適当とし、2026年10月から利回りを引き上げることも決めた。
予定運用利回りの引き上げも、退職金額を増額し、技能者の処遇改善を図るためのものだ。ただ、利回りの引き上げによる退職金額の増額は40年納付で20万1000円にとどまるため、日額320円の掛金を増額できる複数掛金の導入を求める声が強まっている。
建通新聞電子版で3月25日から4月7日に行ったアンケートでは、退職金額の増額に有効な手段を「建退共の複数掛金」とする回答が全体の34・7%となった。「中小企業退職金共済への加入」との回答は複数掛金を上回る41・7%とこれを上回っている=グラフ参照。
中退共は、現場の技能者だけでなく、中小企業の従業員であれば加入できるなど、加入対象などが建退共と異なるが、掛金を5000円〜3万円の範囲で選択できる。建退共、中退共のいずれを選択するとしても、技能者の処遇を改善すべきだと考える回答者が、全体の76・4%を占めている。
技能者の処遇改善を求める声が強いとは言え、複数掛金の導入には、建退共の根拠でもある中小企業退職金共済法の改正が必要。また、複数掛金の導入には、掛金納付の手続きを容易にするために電子申請方式の採用も前提になる。
提供:建通新聞社