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2025/04/08

品確法の20年 公共発注者の規範に

 1990年代に一般競争入札が導入され、2000年代に入ると小泉内閣によって公共事業費も削減されるようになった。2000年代半ばは、市場の縮小と過当競争によって、インフラの品質が危ぶまれるようになった時代だ。「価格と品質が総合的に優れた契約」を基本理念と、総合評価落札方式の法的根拠となった品確法は、こうした時代背景の中で誕生した。
 2000年2月、自民党の有志議員でつくる研究会は「公共工事の品質確保と向上に向けて」と題した提言をまとめた。公共工事の品質確保を強く訴えた研究会は03年6月に「公共工事品質確保に関する議員連盟」(品確議連)へと改組。その後、議員立法として品確法を制定するに至った。
 相次ぐ不祥事によって公共工事に透明性や競争性の確保が強く求められていた当時、入札契約適正化法と官製談合防止法が相次いで成立。品確法の施行直後には課徴金減免制度を創設した改正独占禁止法も施行されている。地方自治体にも公共工事にコスト縮減を求める首長が少なくなかった。
 国土交通省で入札制度企画指導室長を務め、品確法の法案検討にも携わった建設業振興基金の谷脇暁理事長は「工事の品質に不安を感じる発注者が増えはじめ、業界もダンピング対策の強化を訴える。価格競争の偏重をただそうという雰囲気ができあがりつつあった」と、当時を振り返る。
 品確議連では、落札額が予定価格を上回ることができない「上限拘束性」の撤廃も検討したが、
この会計法の原則を見直すまでには至らず、価格と技術力を評価して落札者を決定する総合評価の定着させ、ダンピングを排除することを優先した。
 施行当時の品確法に対し「業界の関心は必ずしも高くなかった」(谷脇理事長)という。その後の品確法の成果によって、今でこそ総合評価は公共工事の発注方式として定着したが、当初の総合評価は高度な技術提案を求められる大型工事だけに適用されると受け止められ、業界が期待した予定価格の上限拘束性撤廃も実現しなかった。
 品確法施行後も、公共事業費の削減が続き、過当競争によるダンピング受注がしばらく減少することはなかった。
 それでも、谷脇理事長は「品確法の制定には大きな意義があった」と強調する。「適正な公共調達の在り方を発注者に求められるのが品確法。業界の要望を整理整頓し、改正のたびに法律に加えることができる」と、施行から20年の品確法の効果を評価する。
 ダンピング受注減少の転機となったのは、11年3月に発生した東日本大震災だ。未曾有(みぞう)の被害をもたらしたこの災害によって、ダンピングの横行で疲弊した建設業の人手不足が表面化。この問題に対し、品確法の枠組みが大いに生かされることになる。

提供:建通新聞社