財務省は、国の機関が総合評価落札方式を採用して2023年度に発注した工事での、賃上げ表明企業に対する加点措置の実施状況をまとめた。総合評価落札方式を適用した公共工事のうち、賃上げ加点の項目を設けたのは、一般競争・指名競争合わせて2万0057件で、全体の99・9%を占めた。制度を開始した22年度からは14・6ポイント上昇し、ほぼ全件で賃上げ加点を実施。賃上げを表明した企業が実際に契約した割合は86・8%を占め、こちらも5・8ポイント上昇した。
賃上げ表明企業に対する加点措置は、総合評価落札方式を適用している国発注の工事・業務などを対象に22年度から開始した。競争参加時に、今後1年間の従業員への賃上げを表明すると総合評価で加点される。大企業は3%、中小企業は1・5%の賃上げが求められる。表明企業が契約した場合は実績を確認し、未達の場合は以降の総合評価で減点される。
23年度に総合評価落札方式を適用して一般競争で発注した工事のうち賃上げ加点を適用したのは1万5476件で、適用率は16・1ポイント増の99・9%だった。指名競争入札での発注工事も、9・5ポイント増の99・8%で賃上げ加点を適用した。
一方、競争参加者側の状況を見ると、賃上げ加点を適用して一般競争で発注した工事の延べ競争参加者のうち、賃上げを表明したのは5万6831者だった。表明率は81・8%で、22年度からは2・1ポイントとわずかに低下した。指名競争での表明率は90・1%で、7・8ポイント上昇した。
実際に賃上げを表明した企業が契約した一般競争の工事は1万2979件。賃上げ加点を適用する一般競争に占める割合は83・9%で、6・5ポイント増えた。内訳は大企業が落札した工事が3373件、中小企業が9606件。
指名競争で賃上げ表明企業が契約した割合は96・6%で、4・5ポイント上昇した。
全体を通して見ると、発注段階では、ほぼ全件で賃上げ加点が適用されるようになった。延べ競争参加者数に占める賃上げ表明者の割合も拡大したものの、一般競争では賃上げ表明者の割合が微減。一方、賃上げ表明者が契約する割合は一般競争・指名競争を問わず高まった。
25年度も賃上げ加点の運用は継続している。加点を受けるには、毎年度の賃金アップが必要になるため、時間経過とともにハードルは高くなる。日本建設業連合会が会員に対して行ったアンケートでは、「会社経営に影響する」との回答が9割を超えていた。
提供:建通新聞社