財務省は4月15日、財政制度審議会の分科会を開き、建設業従事者が大幅に減少する将来推計を示した上で、生産性を向上させても「インフラ老朽化のペースには追いつかない」と主張した。インフラ分野や地域ごとに建設業従事者の減少見通しを踏まえ、老朽化対策の計画に反映する必要があると注文した。
財政審では、政府が来年度当初予算案編成のために6月ごろに決定する「骨太の方針」に向けた議論を行った。インフラ整備を巡っては、人口減少が進む中でのインフラ老朽化対策の在り方を主なテーマとした。
建設業従事者については、全477万人のうち半数超の243万人が50歳以上となっているとするデータを提示した。20年後には相当数が引退する可能性が高いとし、20代以下の年代は現在と同数の就業者数を維持すると仮定したとき、就業者数は16%減少するとの試算を示した。秋田県や徳島県、愛媛県を挙げ、地域によっては全国と比べてもさらに大きな減少率を見込む必要があるとした。
その一方、建設から50年がたち、老朽化したインフラは今後も増え続けると指摘。国土交通省がi−Construction2・0で打ち出した、2040年度までに建設現場の生産性を1・5倍に向上させるとの目標に対し、「インフラ老朽化のペースには到底追いつかない」と主張。地域やインフラ分野ごとに将来の建設業従事者数の見通しを考慮し、計画に反映する必要があるとした。
インフラのユーザーである地域住民の人口減少を踏まえたインフラ整備も議論のテーマとした。人口は減少する一方、住宅地の拡大により水道などのインフラ延長は増加していると分析。建設から50年以上がたつインフラの比率は40年時点で道路橋が75%、水道管が41%、下水道管が34%にもなるとし、受益者負担も念頭に今後のインフラ整備の在り方を検討するよう求めた。
具体的には、人口密度の低い地域について、将来人口や居住の在り方に基づきコンパクトなまちづくりや、インフラの整備範囲の見直し、優先順位付けを行う必要があるとした。水道管による給水の範囲を狭め、給水車による運搬に切り替えたり、分散型の上下水道システムを構築するイメージも示した。
提供:建通新聞社