国土交通省は6月30日に開いた中央建設業審議会の総会で、改正建設業法に基づく「労務費の基準」の検討状況を報告した。建設業界側からは、技能者に着実に賃金を行き渡らせるためにも、基準に基づく適正な労務費の設定が重要になるとの意見が寄せられた。担い手不足を背景として地域の建設業者の「空白地帯」が発生しつつあるとの指摘もあり、特に公共工事での積算の適正化、価格転嫁促進を求める声があった。
日本建設業連合会の宮本洋一会長は労務費の基準について「建設業独自の画期的な仕組みとなる」と述べた。適正な労務費の設定に加え、建設Gメンによる指導にも期待感を示した。
全国建設業協会の今井雅則会長は、「協会の会員がいない自治体が増えている」と述べ、担い手や後継者不足への危機感を示した。労務費確保を巡っては、特に公共工事について入札による目減りを懸念し、適正な単価の設定を求めた。
全国中小建設業協会の土志田領司前会長は、「末端の労働者が十分な賃金を得て休みが取れてこそ、建設業界に入ろうという人間が初めて出てくる」と発言。地域建設業の空白地帯が広がれば災害時の応急対応にも支障が出かねないとし、発注者を含めたサプライチェーン全体で労務費を確保する必要性を訴えた。
三井不動産の鈴木眞吾取締役専務執行役員は労務費の基準について「工事発注者の立場としても、建設業の持続可能性のために重要だ」と述べた。労務費・賃金の支払い段階での実効性確保を重視する考えも示した。
労務費の基準については、職種別に国交省・建設業団体で意見交換を進める。11月にも開く中建審総会で労務費の基準を勧告する。12月中旬までに改正建設業法を全面施行し、基準を著しく下回る見積り・見積り依頼を禁止する。
提供:建通新聞社