政府の中央防災会議は7月1日、南海トラフ地震の被害を軽減するための「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」の変更を決定した。3月にまとまった新たな被害想定を踏まえ、想定される死者数約29万8000人を今後10年間で8割減少することを目標とした。著しい被害が想定される地域の建築物の耐震化や、上下水道施設の耐震化については、特に重要な施策と位置付け、具体的な目標を定めている。
南海トラフ地震は、神奈川県から鹿児島県までの太平洋側の広い範囲で、震度6弱が発生するとされている。静岡県から宮崎県までの沿岸部の一部では、震度7が発生すると想定されている。新たな被害想定では、建物倒壊と津波、地震火災を合わせて最大で約29万8000人が死亡するとされ、災害関連死は最大で約5万2000人に上るとされた。建築物の全壊消失棟数は約235万棟が見込まれている。
変更する基本計画では、こうした被害想定に対して、死者数を8割、建物被害を5割減少させるため、13の基本的方針を設定。基本的方針のうち、住宅の耐震化やライフラインの強靭化などを実施する「命を守る対策と命をつなぐ対策」は特に重要な施策とし、具体的な数値目標を設定した上で、重点的にモニタリングを実施する。
基本的方針を具体化させる対策として▽社会全体の防災意識の醸成・総合的な防災対策の構築▽被害の絶対量の減少▽ライフラインとインフラの強化▽救助体制と救急救命の強化▽被災者支援と災害関連死防止の対策―の五つに取り組むとした。
津波による浸水被害が想定される自治体で建築物の耐震化に加え、上下水道システムの急所施設(システム全体に大きな影響を与える施設)の耐震化も進める。
耐震性が不十分な住宅や 病院・店舗などの大規模建築物については、改修や建て替えで耐震化する。資金が不足する場合は、部分的な耐震改修や耐震シェルターの導入などで対応する。数値目標として、「南海トラフ地震防災対策推進地域」(南海トラフ地震発生時に著しい地震被害が想定される地域)にある大規模建築物は、2030年度までに耐震性不足をおおむね解消するとした。
上下水道施設については、急所施設の耐震化の他、避難所施設など重要な施設につながる管路の耐震化を実施する。重要施設に接続する上下水道管路の両方が耐震化されている割合を、23年度時点の12%から30年度までに32%まで上昇させる目標を掲げた。
提供:建通新聞社