全国建設労働組合総連合(全建総連)の工務店に対するアンケート調査で、直接雇用している技能者の賃上げを行っている割合は59・2%と過半数を占めたのに対し、賃上げに向けて施主(取引先)に労務費の価格転嫁交渉をした割合は30・5%と一部にとどまったことが分かった。担い手不足が深刻化する中で賃上げの動きは活発だが、原資である労務費確保が進まない現状が明らかになった。
調査は4〜5月に実施し、全国の工務店1196社から回答を得た。一人親方を含め、従業員数4人以下が全体の90・6%を占めている。
大工などの技能者を正規雇用している割合は39・5%で、前年度調査と比べて3・1ポイントアップした。技能者を雇用している工務店に、過去2年間に賃金を引き上げたか聞くと、「引き上げた」との回答は59・2%で、12・3ポイントの大幅な上昇。賃上げを「検討中」の割合は15・4%、「引き上げていない」は25・4%だった。
一方、賃上げに向けた労務費の価格転嫁交渉の状況を見ると、要請・交渉を行ったのは30・5%で、1・1ポイントの微減となった。回答社へのヒアリングでは「見積もりを作成する上で、人件費を高く出せない」との声があった。
建材・設備価格の高騰状況については、工事原価が前年と比べて「かなり上がった」「上がった」との回答が89・6%を占めた。4・1ポイントアップとなり、価格上昇が続いている。
取引先に提示する見積価格への影響については、「大きな影響が出ている」「少し影響が出ている」が91・8%を占めた。
住宅の建材・設備の値上がり分は顧客負担が68・9%となり、4・4ポイントアップ。「一部を自社で負担」「全て自社で負担」の31・1%を大きく上回り、価格転嫁が進んだ。転嫁できなかった理由は「既に見積書を提出していた」が57・2%で最多だった。
回答社からは、建材・設備だけでなく、電動工具や金物などの値上がりも影響しているとの声が寄せられた。材料費の高騰が労務費を圧迫しているとの意見もあった。
技能者の賃金支払い形態は「日給月払い制」が58・7%で前回と変わらなかった。労働時間については「管理できていない」とし、1日単位でしか把握できない割合が19・4%を占めた。「法令通りに管理」は68・7%で、8・4ポイントと大きく増えた。
提供:建通新聞社