国土交通省の調べで、1〜3月に公共工事の稼働時期が集中して繁忙期となる傾向が、太平洋側と西日本で顕著なことが分かった。国交省は積算の前倒しや早期執行の目標設定により極端な繁忙期を抑える「ピークカット」を推進し、建設業の働き方改革や経営の安定化につなげる。一方、北陸地方や北海道は年度末の工事集中が見られず、ピークカットの対象とはしない方向だ。
国交省はこれまで、公共工事の稼働が減る4〜6月期をターゲットとし、閑散期を軽減する「ボトムアップ」を推進。年間を通じて一定の工事量とすることで、休日の確保や人材・機材の稼動率改善、入札不調の抑制を実現する施工時期平準化の取り組みを進めてきた。1〜3月期に着目したピークカットは、平準化の新たな手法となる。
ピークカットの実施に当たり、国交省は23年度の都道府県・政令市・市区町村発注工事を分析した。年間の平均工事稼働件数と比べた1〜3月期の工事稼働件数は全国平均で1・10倍となり、年度末に工事の稼働が集中する傾向が明らかになった。
都道府県別に見ると、奈良県内が1・29倍、福岡県内が1・24倍となるなど特に西日本で1〜3月期への工事の集中が顕著となった。関東地方や、東北地方でも太平洋側の宮城県などは1倍を超え、年度末に工事が集中する傾向が見られた。
一方、山形県は0・82倍、北海道は0・84倍となるなど、北海道・北陸地方で1〜3月期の工事稼働が少なくなる傾向があった。積雪により施工が物理的に困難になるためと見られる。
従来、平準化の対象としてきた4〜6月期は、23年度でも全国的に工事の稼働が低調となっている。全国平均は0・70倍で、都道府県別でも0・62倍(福島県、奈良県)〜0・81倍(香川県)の範囲に収まっていた。
国交省は一連の分析結果を踏まえ、平準化率の目標値の設定に向けた考え方を整理。4〜6月期は全国で共通して工事稼働が少ないため、引き続き優先的に平準化を目指す。
その上で、特に4〜6月期に工事稼働が減少し、1〜3月期に増加している地域については、従来の閑散期の解消に加え、ピークカットを推進する。積算の前倒し、早期執行の目標設定をはじめとした平準化の「さしすせそ」を1〜3月の繁忙期にも適用し、工事稼働の集中を軽減する。
農閑期に工事を実施する必要がある農業地帯をはじめ、冬期の施工量を減らすことが難しい地域については、ピークカットの目標を定めない。
4〜6月期と1〜3月期の両方で工事稼働量が減っている北海道、北陸など冬期の施工が物理的に困難な地域についても、新たにピークカットの目標を定めることはしない。ただし、こうした地域は秋ごろに工事稼働が集中している恐れもあるため、年間を通じた工事量の平準化を目指すこととした。
今秋以降、第3次全国統一指標に基づくピークカットの目標値を公表する。26年1月には平準化の新たな取り組み事例集を作成・公表し、同年3月に閑散期のボトムアップ、繁忙期のピークカットの実績を可視化した地図を公開する。
提供:建通新聞社