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2025/07/10

「変形労働時間制」周知 建設業の繁閑差に対応

 厚生労働省は、労働時間を1年単位で柔軟に設定できる「変形労働時間制」を建設業に周知するパンフレットをまとめた。建設業は、季節による繁閑の差が大きく、繁忙期に長時間労働になると傾向にある。季節に応じて労働時間を配分する同制度の活用を促し、1年間で見たときの総労働時間の短縮につなげる。
 厚労省と国土交通省の連名で主要な建設業団体に対し、変形労働時間制の活用を促す事務連絡を発出した。
 屋外作業の多い建設業は、猛暑・豪雪といった自然条件が工期や1日の作業可能時間に影響されやすい。例えば、建設業法に基づく工期に関する基準では、WBGT値31以上の猛暑日を作業不能日に設定している。
 一方、24年4月から建設業にも時間外労働の罰則付き上限規制の適用が始まった。これにより時間外労働は原則として月45時間(年6カ月まで)、年間360時間とされた。
 しかし、夏期に日中の猛暑を避けるために待機時間を設けたり、豪雪期を休工として他の時期に集中して工事を行おうとすると、時間外労働規制の順守が困難になるとの声が建設業界から寄せられていた。
 厚労省はこうした課題を踏まえ、建設業が1年単位の変形労働時間制を活用する上での要点をパンフレットに整理した。同制度では、1年間の労働時間を平均して週40時間となる範囲で、会社が定める所定労働時間を柔軟化できる。繁忙期の所定労働時間を引き上げ、閑散期を引き下げることで効率的に労働力を活用するイメージだ。
 厚労省は、猛暑の時期に週の所定労働時間を30時間(1日6時間)にまで減らし、その代わりに秋〜年度末の繁忙期に週休1日、週48時間(1日8時間)を設定するような勤務形態を例示。逆に、雪の多い地域では降雪期の所定労働時間を減らし、繁忙期に増やすことが考えられる。
 実施に当たっては▽労働日数は年間280日まで▽連続労働日数は原則6日まで(特に繁忙な時期は12日まで)▽労働時間は1日10時間、週52時間まで―といったルールの範囲でシフト作成を柔軟化する。
 この制度を導入する企業は、就業規則に規定した上で、労使協定を締結して労働基準監督署に届け出なくてはならない。協定には対象となる労働者の範囲や期間、特に繁忙な期間などを明記する必要がある。
 また、協定締結時に最初の1カ月分の労働日・労働時間を示す「勤務カレンダー」を定め、2カ月目以降も30日前までにカレンダーを決める必要がある。あらかじめ月ごとの所定労働日数、所定労働時間を決めておく必要があり、工事の予定や天候が見通しにくい場合は使いづらい点が課題になりそうだ。

提供:建通新聞社