国土交通省発注の直轄工事で、ICT施工を実施した経験のある中小建設企業が拡大している。2024年度までにC・D等級として直轄工事の受注実績のある企業のうち、ICT施工を経験した割合は58・4%となり、23年度調査から5・6ポイント上昇した。国交省は、今後も小規模工事向けの基準類、手引きの整備を通じ、ICT施工に取り組む建設企業の裾野を広げていく。
ICT施工を経験した企業の割合は、直轄工事のAランクで100・0%、Bランクでも97・5%となった。全国に拠点のあるような企業はほぼ全社、ICT施工を実施していることになる。
一方、Cランクは68・9%、Dランクは21・3%となり、それぞれ前年度から4ポイント以上拡大した。C・Dランクを合わせると、直轄工事を受注した3287企業のうち、ICT施工を経験したのは1921社となり、割合は58・4%となった。
ICT施工の普及には、導入効果の可視化と発信が欠かせない。起工測量から施工、検査・納品までに要する延べ作業時間を国交省がまとめたところ、直近6年間の平均では土工が約31%、舗装工が約36%、浚渫工(河川)が約32%、浚渫工(港湾)が約17%となった。特に浚渫工で近年、削減効果が拡大していることも分かった。
こうした結果を踏まえ、国交省は受注者・施工者それぞれにとってのICT施工の活用効果を整理。土工の場合、施工者には起工測量での現地確認の省人化、3次元設計データ作成による施工数量の把握、ICT建機活用を通じた丁張作業の削減、3次元出来形管理による帳票作成の省力化・自動化といったメリットがあるとした。
ICT施工の裾野を広げるため、自治体に働き掛けて公共工事でのICT活用を促す。都道府県・政令市の実施件数は増加を続けており、土工は24年度に7・3%増の3470件となった。
ICT施工に前向きな自治体と、そうでない自治体の二極化も見られる。静岡県や埼玉県、茨城県、山口県などは先進県として、独自に要領・基準類を整備。札幌市も小規模な市街地での施工現場に対応した独自のICT施工に関する運用方針を定め、地域の建設企業が挑戦しやすい施工内容としている。
国交省は自治体の先進事例をICT導入協議会などで共有して水平展開する。小規模工事に対応したMGバックホウによる施工、モバイル端末を利用した出来形計測などの要領を整備したり、小規模工事で活用できる3次元計測技術・小型ICT建機などの活用事例を盛り込んだ手引きを作成する。自治体にも活用を促し、公共工事全体で生産性の底上げを目指す。
提供:建通新聞社