都道府県・政令市の7割超が公共工事の発注関係事務の一部を外部委託していることが国土交通省の調べで分かった。設計・積算や監督・検査に関わる事務が中心で、これらの地方自治体は「職員のみでの業務遂行に困難や支障がある」と認識しているという。マンパワー不足が適正な積算や監督の支障となりかねず、対応は急務だ。
国交省が都道府県・政令市に発注関係事務の現状を確認したところ、職員のみでの業務遂行に困難を感じているとの回答が71・6%を占めた。事務の内容別に見ると、特に設計・積算については79・1%、監督・検査については74・6%の団体が職員のみでの対応が困難だと認識していた。
三重県などからは、中堅・若手職員の層が薄く、設計・積算業務に課題があるとの声も寄せられていた。札幌市などは、入札不調案件の増加を背景として再発注の手続きや理由の精査が負担になっているとの実情の報告もあった。
対応策として、多くの団体が公益法人や建設コンサルタント会社に発注関係事務を委託。特に、茨城県、群馬県、千葉県、新潟県、富山県、岐阜県、三重県、浜松市、鳥取県、香川県、佐賀県は委託先が公益法人のみとなっている。委託先のマンパワーが不足したり、受託できる業務量の制約を上回ってしまえば、自治体の発注事務に支障が出かねない。
小規模な市町村では、技術職員がゼロの団体も少なくない。しかし、国交省の今回の調査は、小規模自治体のみならず、豊富な人員を抱えているはずの都道府県・政令市でも、業務量と比べて発注体制が不十分なことを示唆した形となった。
都道府県・政令市に発注体制に関する課題についてヒアリングしたところ、徳島県は職員の定員割れや発注事務を担う中堅職員の不足を挙げた。同様に、人事や組織体制の不足を挙げる団体が多く、課題全体の半数超を占めた。
この他、発注関係事務を外部の建設コンサルタント業者に委託しても、配置技術者によって成果に大きな差があることを指摘した大阪府をはじめ、委託先の課題を指摘する意見も多かった。
また、積算に時間を取られて工事監理・設計照査といった業務時間を確保できないことを指摘した兵庫県のように、技術力に課題を感じている自治体もあった。
一方、小規模な自治体では、発注関係事務に携わる職員の不足傾向が深刻になっている。人口10万人未満の市の8%、町の35%、村の72%は土木・建築技師が一人もいない。国交省のヒアリングでは、積算は職員が直接行う事例が多く、技術力の不足を懸念する声が多かった。対策として、一部事務組合を設立したり、別の自治体に委託したりして発注関係事務を共同化・広域化する例が見られた。
提供:建通新聞社