国土交通省は、公共事業によるCO2排出削減の効果を金額換算して評価する単価(原単位)の見直しを検討する。現行の原単位は2006年に定めたもので、米国の8分の1程度となるなど、諸外国と比べて小さい。排出権取引を定めるGX推進法が5月に成立したことを踏まえ、原単位の計測方法を見直す。
新規に着手する公共事業や、着手から一定の期間がたった公共事業については、事業に要する費用と得られる効果に基づく事業評価を行っている。これまでも、バイパス道路の整備時に渋滞緩和によるCO2排出削減効果を参考値として示すなど、事業評価に反映してきた。
公共事業評価に用いる技術指針で規定した原単位は、CO2が1dごとに2891円となっている。算出に当たっては、既存の研究が充実していることを踏まえ、CO2が増加した際に想定される海面上昇などの被害額をベースとした。
一方、諸外国は15年のパリ協定採択時に原単位を見直しており、単価は米国やフランスが8倍、英国が13倍となるなど日本とは大きな差がある。またイギリスやオランダのようにCO2削減目標の達成を重視し、被害額ではなく必要な対策費用をベースとした算出方法へと転換した国も多い。
国交省は、50年までにCO2排出量を実質的にゼロにする政府のカーボンニュートラル目標と整合させるため、対策費用法をベースとした原単位の推計手法を検討する。合わせて、単価を最新の数値に更新する。公共事業によるCO2削減への貢献を適正に評価できるようにする。
検討の成果は、事業評価の費用便益分析に関する技術指針に反映する。
カーボンニュートラルだけでなく地方創生など、社会資本整備に求められる役割の多様化を事業評価に取り入れることも検討する。このため、中長期を見据えた政府・省全体の政策目標、地域ごとの計画との整合性に基づく評価の在り方を考える。
例えば道路事業では、費用便益分析以外の評価項目を事業評価カルテに盛り込み、多用な効果を踏まえられるよう規定している。26年度以降、河川や港湾といった事業についても、多様な評価を取り入れることを検討する。
提供:建通新聞社