埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を教訓とした対応を議論する、国土交通省の有識者委員会が7月24日に開かれ、事故の原因となった下水道だけでなくインフラ全体を対象としたメンテナンス・マネジメントの在り方に関する検討を開始した。座長の家田仁政策研究大学院大学教授は、「八潮で明らかになったディープな問題点は、下水道に限ったことじゃない」と述べ、今後、対策を提言し、国民的な議論を喚起する考えを示した。
埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、地中の大口径下水道管が腐食したことが引き金となり、発生したとされる。
委員会はこれまでに2次に及ぶ提言を行い、全国の大口径下水道管路の特別重点調査の実施や、調査に基づく対策の早期実施、上下水道の更新投資に要する費用の確保、地下インフラの点検結果を道路管理者に報告する制度整備などを求めた。6月にまとまった政府の第1次国土強靱化実施中期計画にも、上下水道管路の更新や複線化によるリダンダンシーの確保が盛り込まれた。
24日の委員会の冒頭、石井宏幸上下水道審議官は「今回からは第3次提言に向けた議論を頂くフェーズに入る」と述べ、これまでに提言された上下水道管路のメンテナンス対策のさらなる深掘りとともに、上下水道以外のインフラ全般に関するメンテナンスの在り方についての議論を求めた。
家田座長は「どのインフラにも共通する問題が見えてきた」と発言。八潮市の事故では、大規模な地下インフラが長期にわたって損傷しても、点検や調査で現状を把握できなかった実態を指摘した。点検手法の見直しに加え、「(インフラの)状態を国民に知ってもらい、インフラのマネジメントに何をしなければいけないのか、しかるべき負担をしてもらわない限り現状維持すらできないということと合わせて訴える」と述べ、メンテナンスの可視化の必要性を強調した。
委員会では、第2次提言までのポイントをまとめ、インフラ全般に共通する課題を抽出。今後の委員会で検討すべき論点案を整理し、▽データ等による徹底的な「見える化」▽点検・調査の頻度や内容などの「メリハリ」▽現場の「モチベーション」▽国民の理解と協力を得るための「モメンタム」(社会・政治的な勢い)―を挙げた。
今後、委員会での議論を経て第3次提言を打ち出す。
提供:建通新聞社