国土交通省と日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は、資機材価格や労務費の上昇を受けて設計変更を行った際、予算の制約から計画していた出来高をこなせない課題が生じているとの日建連の指摘を踏まえ、発注条件の適正化を議論することに決めた。国交省は直轄工事を対象に予算制約が及ぼす影響の実態調査を行う。5〜6月に各地方整備局で開いた意見交換会のフォローアップ会議を7月25日に開き、検討テーマに位置付けた。2025年度末までに対策の方向性を示す。
フォローアップの主な柱のうち「公共事業予算の確保と入札・契約制度の改善」のテーマとして、予算管理と発注条件の適正化を位置付けた。
日建連が会員企業を対象に調査したところ、設計変更のあった国発注の土木工事の4割で契約段階の工事数量からの減少や、工事の打ち切りが発生していたという。理由として、発注者の予算制約を挙げる声が最も多かった。
資機材価格などの上昇に対し、直轄工事ではスライド条項の活用などにより契約変更を行っている。ただ、上昇する価格に対して十分な予算を確保できていないと、当初予定していた出来高に達する前に予算が不足する。建設業界では、価格上昇に予算が追いつかないことによる公共事業の実質的な事業量減を懸念する声も根強い。
国交省はまず、増額変更への対応状況や、工事の打ち切りの有無についての実態把握を急ぐ。特定の工程や品目に課題が集中していないかを調べ、適正な発注条件の検討に生かす。
入札・契約制度の関係ではこの他、改正品確法に基づき25年度から試行を開始する技術提案ST型をはじめ、技術評価を重視した総合評価落札方式の在り方もテーマとする。
働き方改革をさらに推進するため、昨年度に引き続き時間外労働の上限規制適用に伴う適正工期・歩掛かり設定について議論する。特に、物流や生コンクリート、クレーンなどの分野で進む働き方改革がコスト・工期に及ぼす影響への対応を話し合う。書類削減・簡素化、適正工期設定もテーマとした。
生産性向上では、新たにプレキャスト工法の活用拡大をテーマに据えた。ICT活用による施工管理の効率化に向け、特に通信環境の整備・確保策を検討対象とすることも決めた。
担い手の確保については、引き続き若手技術者の育成・定着について検討。地整ごとに運用が異なる専任補助者制度の活用促進方策を話し合う。技能者の処遇改善では建設キャリアアップシステムの活用加速化に加え、改正建設業法に基づく労務費支払いの担保策を検討する。直轄工事を対象に試行を予定している、技能者の労務費と労働時間、賃金を把握する試行工事なども議論の対象となる見通し。
提供:建通新聞社