国土交通省は、所管するインフラの維持管理・更新に向けた中長期の方向性を示すインフラ長寿命化計画(行動計画)を見直す。現行計画が2025年度に終了するのに合わせ、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故の教訓を盛り込んだ新たな計画を策定する。インフラの点検頻度・方法を定める法令・技術基準のベースとし、直轄だけでなく自治体管理のインフラを含めた個別施設の長寿命化計画を作成する際の参考とする。
計画の対象施設は、道路や河川から砂防、海岸、上下水道、港湾・空港、公園など多岐にわたる。現行計画では持続可能なインフラメンテナンスを実現するため、予防保全への本格的な転換や、メンテナンスの生産性向上、インフラストックの集約・再編を打ち出した。
八潮市の道路陥没事故は、老朽化した大口径の下水道管の破損に起因して発生したとされる。7月24日に開かれた国交省の有識者委員会で、座長を務める家田仁政策研究大学院大学教授は、下水道に限らずインフラ全般のメンテナンス体制を見直す必要性を指摘。委員会後の会見で「これからやるべきインフラマネジメントに関する憲法のようなものを提言したい」と述べた。
今秋にも有識者委員会がまとめる提言を踏まえ、国交省としてインフラ長寿命化に向けた新たな行動計画を策定する。
特に市区町村では、インフラメンテナンスを支える土木部門の職員数が30年間で約26%減少しており、インフラ管理者の体制整備も求められる。市区町村の土木費はピークの1993年度と比べ、2011年度には半減。その後回復したものの、ピーク時の6割程度の水準で推移しており、加速度的に進む老朽化への対応が課題となる。
家田教授は、道路陥没事故を踏まえて対応すべきテーマとして、インフラの状態の可視化を挙げた。八潮市では定期点検で下水道管路の損傷を発見できなかった恐れがあることから、新技術を活用し、地中のインフラであっても状態を把握できるようにする必要があるとした。
特に地下インフラについては、状態の把握が困難なため、予防保全的なアプローチだけでは対処が困難だとし、インフラの特性に応じて「対策に差異を設けるような発想に踏み込む必要がある」と述べた。
また、インフラの老朽化の程度を分かりやすく一覧で見られるようにすることで、社会全体にインフラメンテナンスの必要性を訴える必要もあるとした。
提供:建通新聞社