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2025/08/19

建設トップランナーフォーラムA愛亀(愛媛県)「海外挑戦はリスクとの戦い」

 愛媛県に本社を置く愛亀グループは「インフラの町医者」を目指して12社・15事業部で構成している。事業の中心は道路の舗装や補修で、小規模ながらもさまざまなインフラメンテナンス事業を展開しており、代表・CEOの西山周氏は「インフラの雑貨屋」と例える。
 近年では、海外にも展開しており、カンボジアやインドの他、アフリカや中央アジア諸国、ウクライナでも活動している。常に「リスクとの戦い」を頭に置きながら、さまざまな手段を使い、受注を拡大しているという。
 1990年からさまざまな国で路上表層再生工法や滑走路調査に携わっていたことが素地となった。2009年にたまたま訪れたカンボジアで、劣悪な道路状況と維持補修工事の様子を見たことをきっかけに、本格的に海外展開を考えた。
 まずは独自開発の全天候型常温補修材「エクセルパッチ」を「つかみ商材」として展開。ODA(政府開発援助)による案件受注を目標に、現地法人設立や現場施工、現地人材への技術教育、資機材の現地生産など、段階的に事業を拡大した。15年と18年にはカンボジアで舗装施工会社と舗装資材製造会社を設立し、波状的に新技術や製品も提案し続けている。
 インドでは05年からPFIによる維持補修工事を行い、ウクライナでは現地材料を活用した補修材の製造・普及を調査している。ODAからの脱却も模索しており、補助金や助成金、国内外のパートナーと連携しつつ現地に根ざした商売や多角的なサービス展開によって、リスク分散と事業の持続性を高めている。競争の激しい国際市場では「中国や韓国、アセアン諸国との価格競争や、経験値の低さによる苦労が多い」と話すが、「日本ならではの技術力や品質管理、現地人材育成など独自の強みを生かすことができれば」と持論を展開する。同グループでは海外からの労働者を受け入れており、技能やノウハウを現地に持ち帰らせることで、さらなる可能性も見出している。
 海外進出の意義と必要性について西山氏は、「国内建設業界は人手不足、賃金上昇、資材単価の高騰、働き方改革や生産性向上への対応、さらには建設投資の縮小や地域内競争の激化といった課題への直面」を背景に挙げる。海外挑戦に当たっては、単に日本の技術を持ち込むだけでなく、現地の状況や法制度、販売先の確保、撤退戦略など多角的な準備を重視。特に「海外事業リーダーの力量や現地への適応力が成否を分ける」と認識する。 
 西山氏は「地域のインフラの町医者」としての国内事業基盤を安定的に維持しつつ、補助金や大使館の支援、現地での誠実な取り組みを後押しに、海外での挑戦を通じて地域社会や日本の技術力を世界に発信し、相乗効果を生み出すことを目指している。
(地方建設専門紙の会・建通新聞社)