国土交通省は8月21日、「下水道管路マネジメントのための技術基準等検討会」の初会合を開き、下水道法令に基づく技術基準で定める点検の頻度や方法などの見直しに向け、議論を開始した。点検の高頻度化や点検方法の高度化の他、事故発生時の社会的影響が小さい箇所については事後保全とするなど、「メリハリ」のある維持管理の実現に向け、2025年末にも中間報告をまとめる。
この有識者検討会は、埼玉県八潮市で1月に発生した、下水道管路の破損が原因と見られる道路陥没事故を受け、下水道管路のマネジメントに関する技術的な基準の見直しを具体化させるために設置した。
議論の開始に当たり、有識者検討会の委員長を務める森田弘昭日本大学生産工学部教授は、今回の事故を「日本で下水道管路の整備が開始されて以降、最も重大な事故」と述べ、「建設からマネジメントの時代へ移行するに当たり、どう維持管理を進めるのかを突きつけられている」と強調した。
下水道管路の維持管理は、点検・調査から修繕・改築までを実施する考えを定めた国のガイドラインと、この実施に向けた具体的な手法をまとめた日本下水道協会の指針などを基に進めている。
有識者検討会では、国のガイドラインや下水道協会の指針を包括的に見直すとともに、重要な事項は法令として国の技術基準に引き上げる考え。合わせて、下水道法令に「下水道管路マネジメントに関する技術的助言」を新たに定め、統一的に実施する事項とその解説を盛り込む。
初会合では、包括的な見直しに向けて、点検・調査や診断、構造に関する基準などを検討事項として整理した。
点検・調査に関しては、硫化水素濃度や防食工の有無、敷設年度を考慮した実施頻度を設定するとした。実施方法については、目視やTVカメラによる視覚調査を補うため、管路の対荷力や圧縮強度の確認を組み合わせたることが重要としている。
診断では、シールド管の判定基準や、ヒューム管や鋳鉄管などの材質に応じた判定基準の設定が求められている。
また、維持管理における管内作業の安全性を確保するために、無人化や省力化が可能なマンホールの大きさへと見直すことも検討する。維持管理の状況については、「見える化」することが必要とし、診断結果や改良方針を公開することも検討事項とした。
提供:建通新聞社