国土交通省は9月4日、建設分野の外国人材育成・確保に向けた有識者検討会を開いた。建設分野での育成就労・特定技能制度の運用方針案を固める11月を見据え、円滑な受け入れと定着に向けた課題を議論。外国人の地域との共生が社会課題としてクローズアップされている現状も踏まえ、建設分野における共生の取り組みの在り方も検討する。
不動産・建設経済局の楠田幹人局長は、「外国人との共生の問題が注目を集めている」とし、有識者に建設分野での取り組みを共有するよう求めた。
有識者会議は、現行の技能実習に代わる育成就労制度が2027年度に始まるのを見据え、育成就労・特定技能に関する建設分野の運用方針を議論する場。11月に方針案をまとめ、12月に政府として閣議決定する。
4日の検討会では、転籍制限期間や育成就労の受け入れ企業が加入する分野別協議会、地域との共生といったこれまでに示された課題について、対応の方向性を話し合った。
7月には内閣官房に「外国人との秩序ある共生社会推進室」が設置されるなど、労働力だけではなく生活者としての側面から外国人を対象とした政策の必要性も高まっている。
建設分野では、特定技能外国人を対象とした国交省の「外国人材とつくる建設未来賞」も参考に、優良な取り組み事例の水平展開を検討。また、特定技能外国人の受け入れ企業が加入する建設技能人材機構(JAC)は、日本人従業員向けに外国人材との接し方に関する講習を、外国人向けに無料の日本語講座を開いている。
8月に開かれた前回検討会では、日本語教育が安全衛生の観点からも必要な一方で、語学教育が安衛経費に含まれておらず、サポートを求める意見が出た。
また、育成就労で働く外国人が自身の意思で就労先を変える「転籍」を制限する期間については、これまでに「2年が妥当」「1年で転籍は難しい」との意見が出た。1年を超える転籍制限に伴って必要になる待遇向上の基準として、「昇給率」を挙げる意見もあった。
技能実習と異なり、育成就労では、受け入れ企業に対して産業分野ごとの協議会への加入義務が課される。特定技能では既にJACへの加入が義務となっており、育成就労の協議会にも加入すると負担が大きいことから、「片方に入ればいいとする」という提案も出ている。
特定技能については、原則不可とされる在籍型出向を認めるか否かも論点となっている。「法制上のハードルは高い」との声がある一方、スキルアップの面で有効だとする意見や、継続的な取引関係のある協力会社間での運用を認めるよう求める声もあった。
提供:建通新聞社