2025/09/09
建設トップランナーフォーラムD奥山ボーリング(秋田県)「地すべり災害予防の対策にDXを活用」
奥山ボーリング(秋田県横手市)は、同社が2011年から取り組んでいるベトナムでの斜面防災事業やDX技術を活用した地すべり災害予防の取り組みについて発表した。
同社は1946年、秋田県横手市で創業。秋田県内および東北地方を中心に、地質調査や地すべり調査・解析・対策工事などを展開し、近年は海外にも事業領域を広げ、2011年からベトナムで地すべり災害予防に取り組んでいる。技術部の鈴木聡専任部長は「近年の異常気象による豪雨は、日本国内のみならずベトナムでも地すべりなど深刻な斜面災害を引き起こしている」と述べ、災害が多発しているにもかかわらず、対策が不十分だとする同国での防災対策の現状と課題を指摘した。ベトナム政府が危険箇所として指定している地点は、1万箇所を超える。24年9月の台風による豪雨では37カ所で地すべりが発生し、約200人が犠牲となった。こうした現状に対し、奥山ボーリングはJICA(国際協力機構)やベトナム政府と連携し、DX技術を用いた地形・地表変異の解析による新たな被害低減対策を提案している。
20〜22年にはJICAの中小企業SDGsビジネス支援事業「案件化調査」に採択され、24年からは「ビジネス化実証事業」として、本格的な実証フェーズに入った。27年11月までの期間で、DXを用いた斜面診断、早期警戒システムの実証・規格化、応急対策工の実証試験を行っている。
実証試験では、地盤の変動を広域的に把握するために衛星データを解析し、危険箇所を抽出。さらにドローンで詳細な地形データを取得し、変動の程度や範囲を可視化。早期警戒や応急対策工の実証試験と効果の検証を行い、ベトナム政府の防災関係機関などに提案する。
早期警戒システムでは、スマートフォンを通じて警戒情報を発信。シミュレーション動画を用いて早期警戒が出来るようにしたという工夫も施されている。
鈴木部長は「言葉だけでは地すべりの危険性が伝わりにくいため、シミュレーション動画入りで早期警戒が出来るようにした」と強調。「日本で培った技術を提供しながら、両国の地すべり被害低減に向け、地すべり予防ソリューションの取り組みを推進していきたい」と、今後の展開に意欲を示した。
(地方建設専門紙の会・秋田建設工業新聞社)