昨年12月から主任技術者・監理技術者が請負金額1億円未満(建築一式は2億円未満)の工事を兼任できるようになったことについて、「技術者の負担と労務が増している」などと、技術者の負担増加を懸念する声が、地域建設業の間で強まっている。「技術者が仕事量の増加を嫌い、複数の現場を持ちたがらない」と、兼任を避けようとする技術者もいる。
全国建設業協会(全建、今井雅則会長)が今年6〜7月に行ったアンケート調査に対し、技術者の兼任に対する会員企業の声が寄せられている。
改正建設業法では、請負金額4500万円以上(建築一式9000万円)の工事で求められる専任義務を緩和し、1億円未満(建築一式は2億円未満)の2現場に限って兼任を認めた。2現場を兼任するためには、連絡員の配置や施工体制を遠隔で確認できる情報通信技術の導入などの条件を満たす必要がある。
昨年12月に施行されたこの規定を活用し、主任技術者・監理技術者を兼任させた全建の会員企業は24・8%、同様に営業所専任技術者に主任技術者・監理技術者を兼任させた企業は7・9%にとどまった。
自由回答では、兼任した技術者の負担が増加するとの意見が目立った。2現場を兼任する技術者の仕事量が増え、「実質的な賃下げ≠ニ同じ」「工事書類作成の負担も増えるため、実質、兼務は不可能」「労働時間の規制が厳しくなり、兼任は困難」との意見もある。
大手建設業は現場の技術者も多く、主任技術者・監理技術者の兼任も中小建設業に比べて容易だとして、「大手と地方の中小企業を同じ制度で管理した弊害が生じている」との意見もあった。
また、技術者が複数の現場を兼任できることに対し、「特定の企業の受注機会が広がっている」「少人数の会社でも多くの工事を受注でき、雇用を維持する会社が不利になる」など、不公平感を訴える会員企業もあった。
一方、回答の中には「人手不足の現在、さらなる緩和を求める」「緩和を歓迎する」と制度改正を前向きに受け止める声もある。また、「隣接する工事は、複数の小規模工事として分割するのではなく、一括で発注すれば技術者の兼任も不要になる」と、特に公共工事の発注を見直す必要性を指摘する回答もあった。
提供:建通新聞社