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2025/09/16

建設トップランナーフォーラムE大地(北海道)「モンゴル国農業者の所得向上を目指して」

 大地(北海道帯広市)は、林秀康代表取締役がモンゴルで農産物貯蔵施設の建設と管理を通じて同国農業者の所得向上に取り組んだ事例を発表した。JICA草の根技術協力事業に採択された。
 本社を置く北海道十勝地域は食料自給率「1100%」を誇り、日本で一番農業が盛んだ。同社は農業施設の建設を専門とし、牛や馬の厩舎、運動施設、農機具の格納庫、農産物の貯蔵庫で多くの施工実績を持つ。事業ではそのノウハウを生かした。
 モンゴルは日本人に相撲でなじみが深く、成田空港から直行便で5時間ほどの距離。国土は日本の4倍、人口は約350万人。サラリーマンの月給が4万〜5万円ほどで日本とは経済格差がある。
 気候は寒くて雪が少なく十勝地域と類似する。荒れ地や草原が中心の土地でロシアから大型の機械を導入する大規模な農家がある一方、2〜3f程度の小規模農家もある。
 事業は小規模農家の所得向上を目指し、ボルノール村で2014年から18年まで4つの段階に分けて展開した。同国工業農業省の国家農業普及センター(NAEC)が窓口となった。大規模農家は小麦の栽培、小規模農家は野菜の栽培を進める。食料自給率が低く、農産物を貯蔵するところが少ないため、小規模農家は収穫後すぐに売らなければならず、買い叩かれていた。そこで、十勝で使っている貯蔵庫の建設、保管の実証実験、普及に向けた取り組み、モンゴルの小規模農家が自分たちで野菜を販売するための直売所を開設した。
 林代表取締役は「農協のような組織がなく、これまでは道ばたで売るか、中国から来た人に売っていた。所得を上げるために自分たちで売るという、北海道では当たり前にやっていることをした」と説明した。
 貯蔵庫の建設は、6月まで土が凍っているため施工面で工夫した。基礎工事ではモンゴル企業が砂利を敷きコンクリートの土間を作った。資材は現地での調達が難しく日本から運んだ。屋根がかまぼこ型の貯蔵庫が完成し、ジャガイモとタマネギを貯蔵して試した。ジャガイモは7d、タマネギは2dを保管。林代表取締役は「タマネギは旧正月の前が一番高くなるため、現地からも高い希望があった」と効果を実感。普及に向けた人材育成へ短期間の研修生も受け入れた。
 貯蔵庫の広さは60平方b。施設内を一定の温度に保つため湿度と温度を管理した。十勝でのノウハウがあるので難しい技術は必要なく800hの家庭用電気ストーブ1個で越冬させた。ジャガイモが自ら発熱する特徴も生かした。経費は電気代とゲル内のガードマンの費用など。20d保管すると電気代を除いて13万5000円くらいの利益が出た。
 17年には国道に面した場所に農産物直売所が完成しボルノール村で収穫した野菜を販売した。7軒の野菜農家と3軒の家畜農家が品物を卸している。取り組みは順調で、林代表取締役は「以前は冬期間に休んでいたが、今は冬も営業している。食事もできるよう設計し、メニューにはカレーと豚丼がある」と結んだ。
(地方建設専門紙の会・北海道建設新聞社)