農林水産省の補助を受けて2021〜24年度に廃止されたため池のうち、福島、兵庫、島根、岡山、山口県の23カ所で新設した水路の能力が接続先の既設水路を上回り、溢水が発生する恐れがあることが分かった。会計検査院の指摘を受け、農水省は雨水を安全に排水できるかどうか、ため池廃止工事の計画策定から設計までの間に確認するよう、関係する「設計に関する手引き」に盛り込み、都道府県に通知した。
農水省は、老朽化し、使用されていないため池が決壊して下流域に被害を及ぼすのを防ぐため、貯水機能の廃止工事に対する交付金を設けている。廃止に当たっては堤体を開削し、水路を新設して下流側の既設水路に接続することで、ため池の跡地に雨水が貯まるのを防ぐこととしている。
会計検査院が調査したところ、廃止に伴って水路を新設した14県のため池198カ所のうち、11県の94カ所で事業主体が接続先の既設水路の状況を確認していなかった。新設水路と既設水路の流下能力を比較すると、4県のため池14箇所の廃止工事で新設水路の能力が既設水路を上回っていた。設計時に既設水路の能力を把握していた工事でも、2県9カ所で溢水の恐れがあった。
これを受け、7月には地方農政局から各都道府県に通知を発出。下流域への影響を確認するよう促すとともに、既に廃止したため池を含め、必要な対策を施すよう求めた。
提供:建通新聞社